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しどろもどろな王
しおりを挟むこのままではローゼリアが領地に引きこもってしまい、中々会うことは叶わないと思ったレイドルートは、咄嗟に自分の妃になればいいと口走った。しまったと思った時には、もう遅い。場の空気が鎮まりかえってしまった。
「陛下・・・それは・・・陛下のお妃様が不在で政務が滞っている・・・という事でしょうか?」
「・・・そ、そうかもしれんな!」
「かも、しれない?」
「あ、あぁ、あれだ!名だけ妃になれば良いのだ。さすれば、離宮に滞在するのはおかしくないだろう?たまにでいい、妃教育の実践だと思って、政務を少しばかり請け負ってもらえれば私も助かる。それに、ローゼリア嬢に好きな男ができればいつでも離縁する手はずを整えておこう。そうすれば、ローゼリア嬢にとって、悪いことばかりではなかろう?」
必死に焦りを見せながら、繕うように言葉を吐き出したレイドルート。それを見ていたローゼリアはレイドルートがこんなにも、頼りなく見えたのは初めての事だった。
「私に利がありすぎではないでしょうか?」
「そんな事はない。ローゼリア嬢はこれからの女性なのだぞ?まだ若いし、それにとても可憐なのだ。男達が放っては置かない。だから・・・私の妻としての立場は、仮のものだ。そう気負わず、うまく利用してくれればいい」
「ありがたいお言葉ですが・・・」
「・・・ダメか?」
やはりローゼリアからの返事が色よいものではなさそうだと国王レイドルートは顔を俯きかけた。
「少しだけ考える時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「あ、あぁ、かまわんぞ。だが、なるべく早い方がいい。ライモンドとの婚約が白紙に戻った事を知った貴族連中らが我先にと縁談を持ちかけてくるかもしれんからな」
表情だけ見ればとても心配しているように見える。だがレイドルートの心境は・・・ただただローゼリアを他の男の元へはやりたくないその一点。
「お気遣いありがとうございます。その点も踏まえて考えてみます」
そしてレイドルートは乗ってきた馬車で王宮へと帰って行った。
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