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軽い足取りと羞恥
しおりを挟む離宮を後にしたレイドルートは、王宮の自室へと戻り、寝台に横になった。ローゼリアの柔らかな笑み。妃教育を受けるようになってからは、あんな風に自然な笑みを浮かべることは少なくなっていた。だからこそ、その笑みを引き出せた事はレイドルートにとって、喜びが大きいものであった。
「・・・ローゼリア・・・君は幸せになるべきだ・・・幸せに・・・してあげたい・・・できるなら私が」
レイドルートは、遅い初恋を知った。だが、親子ほど歳の離れた令嬢に対し、好きだなどと気持ちを正面から伝えることなどできなかった。ましてや一国の王である。そして後を継ぐ予定の王子もいる。レイドルートにとっては、その全てが足枷となっていた。ローゼリアの笑顔を思い出しながら、静かに眠りについた。
まだ薄暗い早朝、レイドルートは、早起きして離宮へと足を運んでいた。ローゼリアと朝食を一緒にと、早る気持ちで足取りも軽い。まだ陽もささぬうちから離宮に現れた国王を見て、昔から知る旧知の使用人達は、苦笑いやら、微笑ましいやらニヤニヤと国王レイドルートを見ていた。
「・・・ん・・・」
「おはようございます。カーテンをお開けしますね」
「・・・あ・・・ルゼさん・・・おはようございます」
「よく眠れましたか?」
「はい。思い詰めていたのが嘘みたいにぐっすりと」
「それはようございました。朝のお支度をいたしましょう」
「え?大した支度は要りませんわ。このまま屋敷へと帰るだけですもの」
「まぁまぁ・・・そんな事を言われれば落ち込まれてしまいますわ・・・」
「落ち込む?・・・誰がです?」
「そうでしょう?隠れてないで出てきてくださいな」
ルゼと呼ばれたメイドがドアの方を見ると、ゆっくりとドアが開いていった。そこに立っていたのはしょんぼりとした様子を見せるレイドルートだった。
「へ、陛下!?」
「・・・朝食・・・一緒に食べようと思ったんだが・・・」
「あ、え、えっと・・・ご一緒してもいいのですか?」
「あぁ、もちろんだ!」
「ですので、お嬢様、お支度をしましょうね」
「・・・あっ、す、すみません、こんな格好で陛下の前に!」
レミリアはまだ寝台で身体を起こしただけの状態で、王宮で用意された夜着を纏っていた。たった布一枚の夜着の頼りなさに、ローゼリアはたちまち頬が赤く染まっていく。
「はいはい、陛下は食堂でお待ちくださいね。お嬢様はご準備ができましたらご案内いたしますので」
「あ、ああ、す、すまない・・・待ってる」
「は、はい・・・」
パタン・・・
「陛下は女性に不慣れで、こういう事には気がきかないのですよ」
そう言って、初老のメイドはテキパキとローゼリアの身支度を整えていった。
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