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国王陛下の印象
しおりを挟むいつもは紳士的で大人の男性というイメージだったが、今はどうだろう。気まずそうに頭を掻く目の前の男は、照れ隠ししているようにも見える。
「・・・ふふっ・・・」
「んぁ?」
「あっ、し、失礼しました!」
ローゼリアはレイドルートの態度が可愛らしく見えてしまい、つい小さく笑ってしまった。レイドルートが変な声を出してしまったが、ローゼリアは咄嗟に謝罪をした。
「あぁ、気にしなくていいぞ?そうだ、明日の朝、侯爵家に届けると連絡を入れている。今日は、このままこの離宮で休むと良い。この離宮は私の許可がなければ立ち入りできない。その上、ここの使用人は私が幼い頃から支えてくれている者しかおらん。外には警備も敷いているから、安心してよいぞ?」
「あ、あの・・・そこまでして頂かなくても・・・」
「いや、むしろさせてくれ。愚息のせいで、ローゼリア嬢にはいらぬ心労をかけ続けていたのだからな。しかも、あんな・・・言葉にするのも虫唾が走る」
「・・・で、では・・・お言葉に甘えて今晩はこちらで休ませていただきます」
「あぁ、そうしてくれ。自分の屋敷だと思ってゆっくりくつろいでくれていいからな」
レイドルートはそれだけ行って去っていった。ローゼリアは、離宮に配置された使用人により、手厚くお世話を受け暖かな食事も用意された。だが、今は見てしまった事が頭から離れず食欲も湧かなかった、結局用意された食事もほとんど口にできずに残してしまった。外は闇に包まれ、王宮から離れた離宮は静寂に包まれた。その静けさが昼間の事を思い出させてしまう。寝台の上で膝を抱え座ったまま、何度目かわからなくなったため息をついていた。
コンコンコン
「・・・はい・・・?」
不意にドアをノックする音が聞こえてきた。静かに扉が開く。
「眠れないのか?」
「へ、陛下!?」
「・・・すまん。夜半に女性の部屋を訪れるなどと、紳士のする事ではないのだろうが・・・ローゼリア嬢は、私にとっては娘同然なのだ。だから、気になってな・・・」
娘同然。その言葉に胸にチクリと刺さるものがあった。婚約破棄などとなれば、義娘になる予定だったものも、全て白紙となる。
「ご、ご心配をおかけして申し訳ありません」
「いや、謝らないでくれ。食事は口にあわなかったか?」
「い、いえ、そう言うわけではなく・・・食欲がわかなくて」
「・・・そうであろうな。何か食べたいものはないか?」
「・・・食べたいもの・・・そうですね、何か温かいものが飲みたいです」
「そ、そうか!すぐ用意しよう!待っててくれ!」
レイドルートはそのまま勢いよく部屋を飛び出して行った。その様子をなんだか少年のようで可愛らしいと思ってしまったのは、ローゼリアの心の中に留めておくことにした。
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