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お茶に現れた相手

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「今日もまた、あの方とご一緒なのでしょう?」

「・・・そのようです。ローゼリア様、大変申し訳ありません」

「責めてるわけではないのです、グリンベル夫人、頭を上げてください」

「しかし・・・乳母としての教育がきちんと出来ていなかったという事の表れでございます」


王宮の中庭。週に一度は第一王子であるライモンドとのお茶の時間が設けられる事になっている。しかしこの一年、このお茶の時間に、ライモンドが現れたのはたったの2回。それも来てやったと言わんばかりの態度で、つまらないとすぐに退席した。ローゼリアが口にするあの方。そう、ライモンドは婚約者であるローゼリアそっちのけで、公爵令嬢のミレーヌに熱を上げている。


「ここ、空いているかな?」


ローゼリアは声のする方を振り向く。


「・・・陛下!ど、どうぞ!」

「失礼するよ」


国王レイドルートは、ローゼリアの向かいの席につく。


「ローゼリア嬢、挙式まであと一ヵ月だな。準備の方は順調かな?」

「お気遣いありがとうございます。滞りなく進んでおります」

「そうか、ローゼリア嬢のウエディングドレス姿はさぞかし綺麗であろうな」

「陛下にそう言われると、冗談でもそう感じてしまうのですから、不思議ですわ」

「冗談ではないんだがな・・・」


レイドルートは納得がいかないという表情で苦笑いしている。


「ところで、ライモンドとは最近どうだ?」

「・・・しばらくお顔も見てないもので・・・何もお伝えする事ができず・・・申し訳ありません」

「あっ、いやっ!その、謝らないでくれ。聞いた私が馬鹿だったよ。あいつがどこで誰と何をしているなど筒抜けだからな・・・」

「誠に申し訳ありません」

「何故ローゼリア嬢が謝るのだ・・・何も悪くないではないか」

「私に・・・殿下のお心を繋ぎ止めておく魅力がないからですわ」

「何を言っておるのだ!ローゼリア嬢は魅力しかないぞ?可憐でいて努力家で、心根も優しい。こんなオジサンとのお茶にも嫌な顔せず付き合ってくれるのだからな」

「陛下・・・」

「ローゼリア嬢、自信を持って良い。君は努力しているではないか。どこぞの令嬢よりも素晴らしいと自負していい。今君がしている事は、自分磨きと思っているかもしれんが、半分あっていて半分は違う」

「半分は違う?」

「そうだ、君が今努力しているのは民の為なのだ。民の暮らしを守り、より良くしていく事。それこそが王族の使命。ローゼリア嬢は、自身を高める事でその仲間に加わろうとしてくれている。苦労をかけている事は承知している」

「苦労だなんて、そんな事は・・・」

「いや、王子妃教育というのはね、辛いと逃げ出してきた令嬢達も過去にはたくさんいる。弱音を吐かず自分を高めようとする姿。私は嬉しくも誇らしくもある。息子は素晴らしい女性が妻になってくれるのだと羨ましく思うのだ」

「羨ましい・・・ですか?」


レイドルートは昔の事を思い出しているようで、ローゼリアから視線を外すとどこか遠くを見つめていた。






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