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48、最後の爆弾

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「王位継承権の放棄など本気で言っているのか!」


そんな事は許さないとばかりに、国王が叫んだ。


「えぇ、本気です。私が国王になったって、王妃でいてくれるのがリシェリアでなければ意味がありませんから」


アイスフォードの意志は固い。アリエルが国王に視線を向ける。


「兄上、アイスフォードが王位継承権を放棄した今、他に王位継承権を持つものはいない。どう落とし前つけるか?」

「それは・・・」

「あぁ、もちろん、フラムウェルもダメだ。罪人だからではない。あれは元より継承権がない」


アリエルの言葉にフロアがざわついた。


「な、何を言っている・・・フラムはここにいる王妃の子供だぞ!」

「間違いなく王妃の子だ。しかし、兄上の子ではない」

「そんな事があるはずない!」

「信じたくない気持ちがあるのはわかる。長年自身の子だと思っていたのだからな。なぁ、義姉上よ、フラムウェルの本当の髪は何色だ?」

「・・・」


王妃ミカエラは何も答えず俯いている。


「待て、フラムウェルは黒髪だ!嘘も何もなかろうが!」

「兄上、上手く騙されたな・・・フラムウェルの本当の髪の色は茶色だ。なぁ、ナッティルド公爵よ!」


フロアにいる全員がナッティルド公爵に注目した。


「・・・わ、私は・・・」

「隠しても無駄だ。フラムウェルが塔に幽閉されて、髪を染めなくなった。するとどうだ、伸びてきた髪は茶色だ。黒髪の兄上と、赤髪の義姉上からは産まれるはずのない色だな。俺は知ってる。王妃、ミカエラ。君は一度は私の婚約者だった。まぁ、親に決められた政略結婚の相手だったが・・・君は私と結婚したくないと、前王妃であるアイスフォードの母が亡くなったすぐに兄上に取り入って王妃の座についた。兄上も妻が亡くなったばかりだったというのに、若い女がよかったのだな?すぐに受け入れるなんて思わなかったぞ」


リシェリアは、アリエルの腰に手をまわし、胸に頭を預けてしっかりと抱きしめた。アリエルが辛い過去の話をしているのだと知ったリシェリアは、慰めようとしたのだ。アリエルはそれに気付いて嬉しさが込み上げた。


「リシェ・・・ありがとう」


アリエルはリシェリアを抱く手に力を入れ、頭を2、3回優しく撫でると話を続くける。


「随分と前から気付いてはいたが・・・君はナッティルド公爵と、学園に在学中から男女の関係にあったな?それは卒業し、俺の婚約者になった時にも、兄上の妻になり、王妃になっても続いた。兄上と一緒になって、初夜の日から考えると・・・少々身籠るのが早くないか?兄上と性交渉する前にフラムウェルが腹にいた事になるが・・・それをどう説明する?」

「・・・うっ・・・」

「ミカエラ・・・」

「よって、フラムウェルは王族の血は流れていない。アイスフォードが王位継承権を放棄した。この王家を継承していく手立てはとれなくなったな。兄上、どうする?」

「こうなっては・・・私の治世は終わりだな・・・民に信頼されない王家など・・・ないに等しいな・・・息子二人の所業、王妃の不貞、醜聞を恐れ隠した事で犯罪を助長させてしまった・・・罪は多いな・・・私は・・・退位する・・・王にはふさわしい者を皆で選んでくれ・・・宰相・・・任せる」


国王は王妃とアイスフォードを伴って、フロアを後にした。拘束されていた令嬢三人、関係した当主達は事情聴取と処罰の為、近衛騎士に同行され別室へと移された。


「アル様・・・大丈夫ですか?」

「あぁ、リシェがついていてくれるから大丈夫だ。俺は、リシェには弱いが、リシェがいてくれるから強くもなれる」

「ふふっ、私次第なのですね」

「あぁ、そうだ」


互いを見つめ微笑みあう二人の元に、足音が近付いてきた。


「アリエル・モーガン辺境伯様、いえ、アリエル・アルタイル様」




ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

【アリエルside】

見てみろ、同年代のオッサン達を

こんなに美人で可愛くて甘え上手な若い嫁を貰うんだ

全ての男ども、羨ましいだろ?


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