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21、朝から幸せな事ばかり

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朝から騒ぎがあったが、朝食を食べ終えた後ハイドとフローラも加えて今後の話をしていた。

「ハイドとフローラがいる、何かあればいつでも頼るといい」
「・・・団長様はいらっしゃらないんですか?」
「お、俺は・・・」
「そうですよ旦那様!よくて数日に一回程度しか屋敷に戻られないでしょう?騎士団長であるから大変なのもわかりますが、旦那様はこの辺境領の当主様でもあるんですよ!」
「そうです旦那様、リシェリア様がいらっしゃらなくても、もう少し屋敷には戻っていらしてくださらないと」
「・・・うっ、わかったすまない」

使用人二人に小言を言われ、アリエルは苦い顔をした。

「リシェリア様はどう思います?」

不意にフローラがリシェリアに問いかける。

「私ですか?・・・毎日帰ってきてほしいです」
「ふぁっ!?」
「ふふっ、旦那様、こんな可愛いお願い聞かないわけにはいきませんね?」

ハイドがニヤリとしてアリエルに言った。

「わ、わかった、わかった!ちゃんと毎日帰ってくる」

アリエルは照れを必死に隠して返事をし、チラッと横目で見たリシェリアは嬉しそうな様子だった。

敷地内の案内をすると言って、ハイドがリシェリアを連れ出す。フローラが話があると言うので、屋敷の二階にある執務室に場所を移した。

「さっきの事はわかった。もう小言はいいだろう」
「それはまだ言い足りませんが、今はその話ではありません」
「では、なんだ?」
「リシェリア様の所持品についてですね」
「所持品?」
「えぇ、ご事情を詳しくは聞けていませんが、着の身着のまま出てこられたのでしょう。着替えも数点、必要最低限の物しか持っておられません」
「確かに彼女一人で出歩くには、あの程度の荷物が精一杯であったのだろうな」
「えぇ、ですから本日、リシェリア様を連れて街にお買い物に行ってきますわ」
「二人・・・で行くのか?」
「じゃあ旦那様がお連れになります?女性ものの下着なども必要ですが」
「・・・あ・・・あぁ、それは頼む」
「今日街に出てみたらご興味もわかれるでしょうから、近いうちに案内して差し上げればよろしいかと想いますわ」
「そ、そうだな、そうしよう!」

フローラにいい提案を受け、早速明日時間をつくろうと、アリエルの中で最重要案件となった。騎士服に着替え、詰所に向かうため玄関を出ようとしたところにハイドに連れられたリシェリアに出くわした。

「詰所に行ってくる。遅くなるかもしれんが必ず帰ってくる」
「はい、お帰りお待ちしてますね」

リシェリアがにこっと微笑むが、アリエルは必死に無表情を取り繕う。

「旦那様、少しは嬉しそうなお顔なさればいいのに」

フローラの突っ込みが入る。リシェリアが近くに寄ってくると、口に手をあてて少ししゃがむように言う。内緒の話でもあるのかと思い少し屈むと、アリエルは赤面して固まってしまった。リシェリアが、軽く触れるだけだが頬にキスをしてきたのだった。




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次回

あんな旦那様初めてですよ!
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