影は落ちました

agapē【アガペー】

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64、邪魔なのは誰?

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ノエルは後悔した。入室した部屋に仲睦まじく雰囲気のいいカップルが二組。どう見ても自分は邪魔だと。


「僕お邪魔みたいですね?」

「いいえ、邪魔なのは私達もですわ。ノエル殿下、別室に行きましょう?」

「えぇ、その方がいいようですね」

「レオン殿下、節度は保ってくださいね?それでは、失礼します」


ノエルが退室する後に、ノアールの手を引いてオーロラが続く。



別室に入ると、先ほどと同じように足の間に座ったオーロラを、ノアールは嬉しそうに後ろから包み込んで抱きしめた。そしてまた、肩に顎を乗せ、オーロラに擦り寄っている。


「はぁ・・・兄上のあんな姿を目にするなんて驚いたよ。最近は、女性を膝に乗せるのが流行ってるの?」

「流行ってるかどうかはわかりませんが、ノアールにとっては当たり前ですけど。あれは荒療治したまでの事です。マルティナが殿下の愛情表現に物足りなさを感じているみたいでしたので、実践させただけですわ」

「僕はオーロラ嬢に関心するよ・・・ところで、なにか話があるのかい?」

「あれからルーナはどうです?」

「あぁ、第二で可愛がられてるよ。まだ、精神は保っているみたいで、必死に抵抗してるようだね」

「そうですの・・・喜ぶと思ったのですが、違うのですね」

「ルーナ嬢の好みは見目の整った、地位のある男だろう?第二は基本、低位貴族の次男や三男、もしくは平民が殆どだ。ルーナ嬢の求める相手はそういないだろうね」

「そういう事ですのね・・・」


ふむ、とうなずく素振りをし、オーロラが話を続ける。


「レオン殿下は、これから・・・表の綺麗なところを理想の王として進んでいくのでしょうね」

「ん?そうだね・・・兄上はそれでいいと僕は思っているよ。裏の汚れ仕事は僕が引き受ければいい。僕は兄上のスペアでしかない。それに兄上は優しすぎるんだ。裏側を知ってしまえば、人を信用できなくなるだろう。裏切ることなんてできない素直な人なんだ。狡猾な事には向かない。国の象徴である事。それが兄上の存在であればいいと思っている」

「ノエル殿下、お辛くはありませんか?」

「辛い?・・・もう慣れたさ・・・」

「お互い純粋な上を持つと苦労しますわね」

「そうかもしれないな」


コンコンコン。



ノックの音がして、外から女性の声がする。



「オーロラ様、フィオナでございます」

「どうぞ」

「失礼します」

「ん?彼女は?」

「フィオナ・グレイシー。当家の・・・いえ、私が抱える使用人の一人です」

「グレイシー伯爵家が次女、フィオナでございます」

「フィオナ嬢よろしく。それで?彼女が来た理由を伺っても?」

「殿下の婚約者におすすめしたくて」

「はぁ!?何を急に」

「ノエル殿下、レオン殿下の婚約者がマルティナに決まってから、釣書がさらに増えましたでしょう?」

「あぁ・・・よく知ってるね?」

「少し考えればわかる事です。優良物件が減ればおのずと残りに集中する。倍率も高くなりますわ。レオン殿下に来ていた分がノエル殿下にまわってきたのでしょうね」

「間違いないだろうな」

「今回は、単純にうちの使用人はいい子ですよと言いにきたわけではないのです、理由がありましてね」

「ほぉ・・・理由ね。伺っても?」

「ノエル殿下は裏の汚れ仕事とおっしゃいますが、さまざまなところに影響力をお持ちなのは存じておりますわ。わかってはおられるでしょうが、社交界で着飾っているだけのご令嬢は、ノエル殿下のお相手には向きません。ノエル殿下が優秀なのは重々承知。しかし、全てを見せないまま、結婚生活を送ることは困難ではありませんか?」

「表向きはできるだろうが、隠し事をしながら夫婦として過ごす事にはなるだろうね」

「まずそこに理解がある方でなければ、奥方になった方の方が先に病みますわ。レオン殿下のように、優しい心をお持ちの方ならなおさらです。それから、着飾ることを第一に考え、噂話が大好きで目立って貰っても困るのです。ノエル殿下が持つ機密が漏れてしまっては元も子もありません。それに、殿下の身が危険な事もありましょうが、夫人になる方にも危険が伴います。そんな時に、自身の身を守る術を持っている女性は少ないのです。ノエル殿下のお相手には、私はそれらは最低条件だと思いますの。いかがです?」


ノエルの表情を窺うオーロラだったが、にこやかに話を聞いているだけで、感情は読み取れなかった。ノエルはこの話をどう聞いていたのか・・・





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次回

僕の一番の有力候補は他にとられちゃったしね


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