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着慣れない盛装と緊張
しおりを挟むソルディオは緊張の面持ちで鏡に映る自分を見ていた。貴族として社交に参加するなど、何年ぶりのことだろうか。互いの腹の探り合いなど、もうとっくの昔に忘れてしまっている。少年といってもおかしくない年頃の頃から、辺境の騎士団に入団し、屈強な騎士達に揉まれてきた。剣の腕や、体力に自信はあっても、人前で作り笑いを浮かべながら本音と建て前を使い分けるなんて芸当は、自分には向かないし、できないだろうと思っている。じっと、眉間にしわを寄せたまま鏡を見ていたが、どれくらいの時間をそうやって過ごしていたのだろうか。ノックの音で、ハッと気付かされる。
コンコンコン
「は、はいっ!」
「入るぞ」
ノックの後、部屋へと入ってきたのはアバンス公爵家の嫡男であり、近衛騎士団の騎士団長も務めるウィルフレッドだった。
「準備はどうだ」
「なんか・・・その、慣れませんね、こういうのは・・・」
「うむ・・・騎士服以外の服装のお前を初めて見るな・・・案外様になっているじゃないか」
「ならいいんですが・・・」
青春の殆どを騎士団で過ごしたソルディオは、貴族子息としての立ち振る舞いには全くと言っていいほど自信がない。そのうえ、気慣れない盛装までしているのだから、それにもまして緊張が上乗せされているのだ。
「まぁ、そう固くなるな。フローラと毎日特訓してきただろう?それをただ同じように落ち着いてこなせばいいだけだ」
「・・・それはそうですが・・・フローラさん相手ならまだしも、知らないご令嬢の相手なんて、俺には無理ですよ?」
「フローラならいいのか?」
「あ、い、いや、そういうわけではないんですが!」
「じゃあ、どういうわけだ?」
「・・・踊り慣れた相手ならまだしもという事です」
「そうか。だが深く気にするな、身体に叩き込んだんだ。本番では自然と身体が動いてくれるさ」
騎士団長と公爵令息という二面を持ち合わせるウィルフレッドにとっては造作もないことだ。軽く言ってくれるなとソルディオは、少しだけ恨めしく思っていた。
「よし、ご令嬢がエントランスでお待ちかねだ。行くぞ」
「・・・は、はい・・・」
相手が誰だとは聞かなかった。聞いたところで見知らぬ令嬢なら誰だって同じ事。王都にさほど縁のなかったソルディオにとって、王都の令嬢など、どこの誰であろうが一緒なのである。たった一人を除いては。優雅に、そして颯爽と歩いていくウィルフレッドの背を見つめながら、ソルディオは、ため息まじりの息を漏らしながら遅れまいと後ろをついて歩いていった。
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コメントありがとうございます!
先の構想を悩んでおりまして、時間がかかっております
もうちょっとしたらウィルフレッドとレティシアの話や、その後のマクシミリオンや、ミリアとアイオロスや王子達の恋模様などを書いていきたいと思います(^-^)
お待たせしてすみませんがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ