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スッテプを乱すほどに
しおりを挟む目の前のフローラとの距離の近さに、ソルディオは緊張の色を隠せない。
「ソルディオ様、緊張なさってます?」
「・・・え、えぇ・・・」
「実は私もです」
「へっ?」
フローラはソルディオの緊張を解くため、自分も緊張しているのだと苦笑した。その笑顔と優しさに、ソルディオの頬がほんのり染まる。
「令嬢としての教育は受けてきましたし、いずれ夜会やパーティで踊る機会もあるだろうと、ダンスもたくさん習いました。ですが、実践する間もなく社交界からは遠のいていましたから、自信なんてありません」
ふふっと笑うと、執事のヘリオスの促すままに、フローラがソルディオの手を引いてホールの中ほどまで進む。
「さぁ、お二人とも、まずは簡単なステップから踏んでみましょうか」
ヘリオスの声掛けに、二人してぎこちないステップを踏む。フローラは社交界から遠のいて長い間経ったとは言うものの、少女の頃に体にしみこませていた為か、少しずつ勘を取り戻していく。だがソルディオと言えば、まったくもって基礎がない状態の為、今、目の前で与えらえているヘリオスからの課題をこなすのに必死な状態だ。
「ソルディオ様、表情が硬いですな。もっとリラックスしてください」
「そうは、言われ、ましても・・・おっ、す、すみません!」
ヘリオスの声がけに、ソルディオは足をもつらせてしまう。組んでいたフローラの手を引いてしまい、よろけてしまう。
「気になされないでください。私も、習い始めたこ頃は、よく相手の足を踏んでしまって」
昔を思い出しているのか、フローラがくすくすと笑う。その様子に可愛いなと思いながらも、練習の相手とは誰だったのかと悶々とする。
「実家のおかかえの騎士が、相手してくれたんですけどね。彼の足を何度も踏んで恥ずかしかったのを今でも思い出しますわ」
「騎士の方がお相手・・・」
「えぇ、何度も足を踏んでしまったものですが、ガスパルは大丈夫ですよと何度も励ましてくれて、そのたびに上手くならなくてはと必死になったものです」
「・・・そう、ですか・・・」
ソルディオは、フローラの口から発せられたガスパルという名が脳裏にちらついて仕方がなかった。その後の簡単なステップの練習にも影響を及ぼすほど、集中できなくなっていた。
「はじめてでしたからね、本日はこのあたりにしておきましょう。少々お疲れのようですし、また明日この時間帯に続きを行いましょうか」
ヘリオスの声掛けにソルディオはホッとするも、不甲斐ない自分に少しだけ落胆していた。
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