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おじいちゃん先生
しおりを挟むそんな様子のソルディオだったが、レティシアが声をかける。
「ソルディオ様、ダンスレッスンの先生は執事のヘリオスが見てくれますわ」
「執事の方が・・・」
「はい、こんな老いぼれでも、ウィルフレッド坊っちゃまを紳士に仕上げた腕は持ち合わせております故、お任せくださればと」
「坊っちゃま・・・」
ソルディオはジッとウィルフレッドの姿を見つめる。その視線を受けて、ウィルフレッドは渋い顔をヘリオスへと向けた。
「どいつもこいつも・・・もう、俺は坊っちゃまって歳じゃないだろう・・・いい加減その呼び方はやめてくれないか」
「いくつになられましても坊っちゃまは坊っちゃまですよ」
ヘリオスはほっほっほと笑う。
「優しそうなご老人ですけど、腕は確かよ。ソルディオ様、時間がないわ。ヘリオス、しっかりと鍛えてくださいませね」
「えぇ、えぇ、頼まれましたぞ」
「では、私達は失礼しますわ。二週間後を楽しみにしております」
レティシアはニコリと笑みを浮かべると、ウィルフレッドを伴って去っていった。
「さぁ、さぁ、時間がございませんからな、早速練習に参りましょうか」
「は、はい」
ソルディオは緊張していた。最初のきっかけは声だった。優しくも優美な耳障りのいい声。そして姿を見て、あぁ、自分は恋をしたのだと気付いた。ついこの前まで、辺境伯令嬢であるエルサ一筋だったはず。それはそれは何年も長い間。だが、別人の事だったかのように、きれいさっぱり気持ちが塗り替えられてしまったのだ。フローラとの出会いはそれだけ衝撃が大きかった。ドギマギしながらも、ソルディオはフローラの手を取った。
「本当にすみません・・・」
「謝罪を受けるようなことがありましたか?」
本当にわからないといった素振りで首をかしげるフローラに、可愛い!と悶絶しながらも、ソルディオは必死に気丈に振る舞っていた。
「俺・・・ダンスなんて全く踊れなくて・・・それに女性の扱いも慣れてないどころじゃなくて、わからないですから・・・」
ソルディオ申し訳なさそうにうつむく。
「私も慣れているわけではありません。二人で一緒に成長していければいいと思います」
優しく微笑むフローラに、もう、ソルディオは骨抜きだ。
「さぁ、まずは組んでみて、基本のステップからいきますぞ」
甘い雰囲気になりそうだったところを、ヘリオスによって空気は特訓の雰囲気へと変えられたのだった。
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