536 / 543
悶絶のソルディオ
しおりを挟むそうやってウィルフレッドを送り出したその日から、城勤めを終えた二人が揃って公爵邸へと戻ってくる。建国祭のパーティの日まで、ソルディオはアバンス公爵邸に滞在する事となった。毎日一緒に城へ向かっては一緒に帰ってくる二人。まるで仲のよい兄弟のようだが、一定の距離はある。二人は一緒なのだから馬車でと思うところだが、それぞれに馬に跨がって帰ってくる。これはどうしてもウィルフレッドが譲らなかった。少しでも早くレティシアに会いたいが為。屋敷につくと、馬から降り、使用人へブルーノを預ければ、颯爽と駆けていく。その後ろ姿をソルディオは苦笑いしながら見るのだ。
「お帰りなさいませ、上着をお預かりしましょうか?」
たった一言でソルディオの心拍数が上がる。
「い、いえっ、だ、大丈夫ですっ!そ、その、汗もかいてますし・・・」
気まずそうにうつむくソルディオ。声をかけてきたのはフローラだった。
「それではまずは湯浴みされますか?それともお腹すかれてるのでしたら、先にお食事でも」
そんなやり取りに、ソルディオは顔を真っ赤に染める。これではまるで新婚の夫婦のやり取りではないかと。でも、冷静に考えればわかるもの。意識してしまっているのは自分だけだと。だが、今のソルディオにはそれどころではない。少しのやり取りだけで緊張し、心臓がはね上がる。
「じゃ、じゃあ、湯浴みを先に・・・」
「承知しました。ご準備しますので、お部屋にてお待ちくださいませね」
「・・・は、はい」
にこりと微笑みを残し、フローラは去っていった。ソルディオは玄関にてうずくまってしまった。
「・・・はぁぁぁぁ~~~~~~」
緊張から解かれたのもあるのだが、フローラを目の前にすると、ドキドキが押さえられない。つい、あらぬことを口走ってしまいそうになる。うずくまったまま立ち上げれず、両手で顔を隠してソルディオはつぶやく。
「・・・あの人・・・可愛すぎる・・・」
そう、ソルディオは、もう、フローラに心を鷲掴みにされていた。唸りながら頭のなかで考える。メイドをしているということは、平民だろうか。いや、公爵家のメイドなら、行儀見習いとかで、家格の低い家のご令嬢が勤めていることもある。もしも子爵家くらいの令嬢ならば、自分にもチャンスはあるだろうかなどと考えていた。こんなところで悶々と考えていても仕方がないと結論付け、ノロノロと自室となった客間へと足を向ける。寝台に大の字に仰向けになり考える。自分は子爵家子息ではあるが、次男であるが故に次ぐ爵位も領地もない。だからこそ騎士になったわけだが。現在は近衛騎士第一隊隊長という肩書きだけはある。だがそれだけだ。今の自分に、彼女を養うような甲斐性はあるのだろうか。幸せになんてできるのだろうかと悶々とする。ソルディオは、湯浴みの準備が整ったと知らせが入り、バスルームにて湯に浸かりながらもずっとその事を考えていた。
22
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
冷血皇帝陛下は廃妃をお望みです
cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたアナスタシア。
厳しい王妃教育が終了し17歳で王太子シリウスに嫁いだ。
嫁ぐ時シリウスは「僕は民と同様に妻も子も慈しむ家庭を築きたいんだ」と告げた。
嫁いで6年目。23歳になっても子が成せずシリウスは側妃を王宮に迎えた。
4カ月後側妃の妊娠が知らされるが、それは流産によって妊娠が判ったのだった。
側妃に毒を盛ったと何故かアナスタシアは無実の罪で裁かれてしまう。
シリウスに離縁され廃妃となった挙句、余罪があると塔に幽閉されてしまった。
静かに過ごすアナスタシアの癒しはたった1つだけある窓にやってくるカラスだった。
※タグがこれ以上入らないですがざまぁのようなものがあるかも知れません。
(作者的にそれをザマぁとは思ってません。外道なので・・<(_ _)>)
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※作者都合のご都合主義です。作者は外道なので気を付けてください(何に?‥いろいろ)
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる