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優秀な番犬
しおりを挟むなんとも言えない空気のなか、公爵夫妻と朝食を済ませたソルディオは客室へ戻ろうと廊下を歩いていた。
「ソルディオ」
視線をあげると、向かいからウィルフレッドが歩いてきているところだった。
「おはようございます、団長」
「あぁ、おはよう。朝食は済ませたのか?」
「え、えぇ・・・」
何故か歯切れの悪いソルディオに何かあったのかと不思議に思うウィルフレッド。だが言わなければならない事がある。
「そうだ、ソルディオ。昨日の話だが、シアは練習相手にはならないからな」
随分と威圧をされるものだと、ソルディオはついつい笑いそうになる。しかしこちらも言わねばならない事がある。
「後が大変そうなのでそれがいいかと思います」
苦笑いしながら答えるソルディオに、ウィルフレッドは納得がいかない。
「いいのか?こういう事でもないと、シアをエスコートしてみたり、ダンスを踊ってみたりなんてできないんだぞ?シアだぞ?」
「え、えぇ・・・確かに素敵な方ですよ?ですが、団長に睨まれてまで手をとりたいとは思いませんよ」
「そうか」
「番犬が優秀すぎて寄り付けません」
「番犬?公爵家に犬は飼ってないぞ?あ、いや、いるな、公爵家の領地の屋敷には」
十日の休暇の最後に寄った公爵領の屋敷で飼っているコリー犬のリード。最後に見たのは幼い子犬の姿だった。それが再会してみれば、3頭の子持ちになっていた、と、そんな事を考えていたウィルフレッドだが見当違いも甚だしいのである。
「ふっ、本当の犬の事を話しているのではありませんよ」
真剣に考えていたウィルフレッドを見て呆れるソルディオは笑いをこぼす。
「犬じゃない番犬って・・・俺か・・・」
「そうですよ。これ以上に腕の立つ番犬もいませんでしょう?自覚なしでしたか」
ソルディオはふはっと笑うと、笑いを押し込めてウィルフレッドに声をかける。
「それでは俺は騎士団へ行く準備をしますから失礼します」
「あ、あぁ」
釈然としない気分で、ウィルフレッドはソルディオの背中を眺めていた。姿が見えなくなると、レティシアが起きないうちに朝食をすませようと踵を返し急いで食堂へと向かっていった。
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