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驚きと困惑
しおりを挟む翌朝目が覚めると、身支度をし食堂へと向かった。そこには公爵夫妻がおり、ウィルフレッドとレティシアの姿はなかった。
「おはよう、レガリー隊長」
「お、おはようございます」
なんだか居心地が悪いような、緊張した面持ちでソルディオはどうすべきか悩んでいた。
「緊張しているのかね?」
「え・・・は、はい」
「気にせずかけなさい」
「で、では、失礼します・・・」
ソルディオが席に着くと、食事が運ばれ出した。
「あ、あの・・・団長は・・・」
「あぁ、ウィルフレッドか?ディア、ウィルフレッドはまだ寝てるんだろう?」
「ふふっ、起きてはいるらしいけど、寝台から出ようとしないらしいわ」
「・・・なんだ、またレティシアと離れたくない病か?」
「それより厄介よ?」
「どういう事だ」
「昨晩、随分と遅くまで起きてた・・・いや、レティシアちゃん寝かせて貰えなかったらしいの」
その一言を聞いて、ソルディオは顔を真っ赤にする。ウィルフレッドとレティシアは夫婦であり、そういう事はあり得る事だ。だが、他人の前で、こんなにも明け透けに夜の夫婦の営みの話をするのは、公爵家では日常なのだろうかとドギマギしていた。
「あら、ごめんなさいね。ルド、困らせちゃったみたいだわ」
「ほぉ・・・」
「朝からする話でもなかったかしらね」
クラウディアは、クスクス笑う。それは、申し訳なさそうにとは言えず、楽しそうに。
「レガリー隊長様、誤解していたらいけませんので、正直に申し上げますが、あの二人はまだ白い結婚ですの」
「・・・は?」
「当然の反応だと思いますわ。昨日寝かせて貰えなかったというのは、エスコートをできるように特訓するというお話があったでしょう?その相手役は誰がするんだと、ウィルフレッドが詰め寄って、納得するまで寝かせて貰えなかったというだけなのよ」
「・・・随分な嫉妬ですね」
「えぇ、そうでしょう。この人譲りなんですもの」
突然話題を振られた公爵ディアルドは、納得いかないという表情を見せてクラウディアを見る。
「ちょっと待ってくれ、確かに似ているところもあるだろう。だが、私はあんなに酷くはないだろう?」
「あら、ルドは私に嫉妬してくださいませんのね?」
「い、いや、そういうわけではない」
「嫉妬なさらないなら、今度の建国祭は是非に、陛下とダンスをご一緒したいですわ。そうね、レガリー隊長様とも一度お相手いただけるかしら?そうだわ、練習相手に私も加えてくださいな」
「ちょ、ちょっと待て!ダメだ!陛下と踊るのも、練習相手も、ディアがする必要ないだろう!ディアは私だけのものだ」
公爵という高貴な身分の男とは思えない態度に、ソルディオはどう反応するべきか困っていた。
「ねぇ?ウィルフレッドとそっくりでしょう?どっちもいい勝負よ」
クスクスと笑うクラウディアに、公爵家では、女性の方が実権を握っているらしいことを学んだソルディオだった。
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