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レティシアからの依頼
しおりを挟む「責めているわけではないのですよ?」
レティシアはソルディオを気遣うように話しかける。
「・・・えっと」
「ソルディオ」
レティシアに、抱きかかえるのを拒否されむくれていたウィルフレッドが、ソルディオに声をかける。
「お前が北の辺境伯令嬢に気があるのに気付いたのはシアだ。辺境に行った時に、俺とも剣を交えながら話をしただろう?俺達二人は知ってる。だから隠さなくていいんだ」
「・・・そう、ですね」
「ソルディオ様、辺境の事情はクレイドル様からも聞いております。ソルディオが落ち込んでいるかもしれないが、私情は職務に挟むなと言っといてくれと伝言も預かってます」
「・・・辺境伯様が・・・」
想い人エルサの父である、北の辺境伯のクレイドル。娘の事を好きだということは前から気付かれてはいただろう。これまでお膳立てなどされた事はなかった事を考えると、婿として足りていないと判断されていたのだろうと思う。しかしそれでも何年も諦めずにここまできた。
「クレイドル様はソルディオ様を気にかけていらっしゃいますわ。息子のように思っていると」
「・・・息子・・・ですか」
息子のように思いながらも認められなかったということなのかと気落ちする。
「クレイドル様はエルサ様がお認めになれば、婿として受け入れるおつもりだったようです。どんなに優秀でも、家の益になろうとも、クレイドル様は、エルサ様のお気持ちが大事だとおっしゃっていました。ですから、ソルディオ様に非があるわけではないのです」
「でも、負けたんですよ・・・」
「ソルディオ確かに今回はそうかもしれん。俺だってしシアを手に入れることができなければ、今頃結婚などしないと断言して、仕事に没頭していただろうな」
「俺だって・・・」
「ソルディオ様」
レティシアが声をかけると、ソルディオはおずおずと顔を上げる。
「ソルディオ様に頼みたいことがあるんですの」
「頼みたい、事ですか?」
「えぇ、間もなく建国祭があるのはご存知ですわよね?」
「えぇ、幼かった頃に両親と共に王都に来て以来参加はしてはおりませんが」
「貴方を貴族子息として見込んでの事ですが・・・パートナーをつとめて頂きたい方がいるの」
「パートナーですか?でも俺は、ここ何年も夜会やパーティ等には参加しておりませんし、ダンスもからっきしですよ?」
「ですから、これから特訓ですわ」
ソルディオは、レティシアの言葉に唖然とした。ここ何年も、辺境でただ剣を振るっていただけ。そんな自分に女性をエスコートし、ダンスを求めると言うのか。諸刃の剣だろうに、そこにどんな思惑があるのかわからず、ソルディオはじっとレティシアを見つめていた。
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