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公爵家での時間
しおりを挟む目の前で妻のレティシアに甘える姿を見せるウィルフレッドに、公爵夫妻がごめんなさいねと言いながら苦笑いしている。ソルディオは、どうやらこれは、公爵家では日常の事らしいと知った。
「ウィル、せっかくソルディオ様を招いているんだから、そろそろ食事にしましょう?」
「・・・む・・・」
ウィルフレッドはまだ甘えたりないと口を尖らせる。
「あら、そんなことする夫は嫌いですよ?」
「!?」
「今日は別々に寝ましょうね」
にこりと微笑むレティシア。知らない人が見れば、ただただ美しい次期公爵夫人が微笑んでいるだけだ。その微笑みに見とれる男は多いだろう。だが目の前の男は慌てている。
「ウィルフレッド、素直に言うことを聞いたがいいんじゃないのか?どうせ落ち込むことになるのはお前だぞ」
公爵ディアルドが笑いながらたしなめる。
「・・・はい」
まだ納得のいかないといった様子のウィルフレッドだが、幸せな時間のお預けをくらうというのはとんだ罰になるということなのだろう。渋々だが、レティシアを隣の椅子におろす。だが、椅子の距離は随分近い。そうこうしているうちに、食事が運ばれてくる。ウィルフレッドはせっせとレティシアの口に料理を運ぶ。これもダメだと言えば、また膝の上に逆戻りだろう。あれこれとありながらも食事の時間はにぎやかに過ぎていった。
「ソルディオ君、今日はもう遅い、このまま泊まっていくといい」
「あ、ありがとうございます」
いくら知り合いとはいえ、子爵家の出である自身が公爵家に泊まるなどと恐れ多い。だが断る理由も見つからず、返事に緊張の色を見せてしまった。
「ソルディオ様、部屋の準備が整うまでお茶にしませんか?」
レティシアがソルディオを誘う。ウィルフレッドとレティシア、ソルディオの3人は、サロンへと移動した。ここでもまたウィルフレッドがレティシアを抱えようとしたため拒否をして、絶賛むくれている最中だ。メイドがお茶を入れ退出すると、レティシアが口を開く。
「ソルディオ様、単刀直入にお聞きしますわ。フローラの事、気になっていらっしゃいますね?」
ソルディオは、レティシアの問いにぎょっと目を見開いて固まった。あんなにも一途にエルサを想っていた。その事実をこの二人は知っている。こんな短期間のうちに心変わりなどしているようではまるで軽薄な男のようだ。どう答えるのが正解なのか。ソルディオはうつむいてしまった。
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