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お見通しな妻
しおりを挟む「ウィル?どうしてあなたが先に屋敷に帰ってきていたのかしら?」
「ん?シアと一緒にいたいに決まってるからだろう?」
「だからといって職務を途中で放り出してはいけないわ」
「・・・シアは俺と一緒にいたくないのか?」
「今はそれを聞いてない」
ウィルフレッドの自室に着いた二人。レティシアは、ソファに座るウィルフレッドの足の間に座らされ、後ろから抱き締められている。というよりも拘束されているの方が正しいかもしれない。
「あなたは本当に変わらないわね」
「・・・それは嫌だと言っているのか?」
「いいえ、別に変わって欲しいだなんて思ってないわ。変わって欲しいって言えばウィルは簡単に変えようとするでしょう?でもいろいろと後が面倒よ」
「め、面倒・・・」
レティシアの言葉にウィルフレッドはあからさまに落ち込む。
「だって手に取るようにわかるわよ。私がこうしてって言って、そう振る舞うようにするのは簡単よ?でも、きっとウィルは必死に頑張ろうと、こなして見せようとするわよね?」
「それは勿論だろう?シアが望むことは叶えたい」
「きっと、無理するわ。そして耐えれなくなる。それから、もうしなくていいんだとなった場合・・・反動で、今まで以上に離して貰えそうな気がしないもの」
クスクス笑うレティシア、言われたことを脳内で考えてみたウィルフレッド。まさしくその通りだろうと納得する。
「俺の愛おしい奥さんは、全てお見通しなんだな」
「えぇ、そうよ。それがわかってて結婚したんだもの」
「はぁ・・・」
ウィルフレッドは深いため息をつき、レティシアの肩に額を押し付ける。腹部に回されていた手が、心なしか強くなった気もする。
「どうしたの?」
「・・・本当にシアと結婚できてよかったって・・・誰にも取られなくてよかったって思ったんだ」
「あら、結婚したからって、安心できるの?」
「え?・・・ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ウィルフレッドは慌ててガバッと顔を上げる。
「ま、まさか、俺を捨てる気か?俺は捨てられるのか?」
「捨ててあげないわよ。そうじゃないわ。私だって、心配よ?結婚してもまだ女性は貴方をうっとりした目で見ている人もいるんだもの。狙っているご令嬢は多いわ」
「それを言うならシアもだろう?」
「ふふっ、じゃあ、お互い様ね。付け入る隙のないように仲良くしておけばいいわ。だから、何も変わらないし、何も変えなくていいの」
レティシアの優しい声にウィルフレッドは安堵の息を漏らし、再度ゆっくりと愛しいレティシアを抱き締め直す。
「だけど、職務は放棄しちゃダメでしょう?」
「・・・善処する」
苦笑しながら、今日のところは仕方がないかと許すレティシアだった。
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