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思い出話の人物が何故
しおりを挟む「それで?副騎士団長様とどちらまで行っていたの?」
メイドのフローラが言付けが済んだと言いにきてから、ミリアを迎えに行き帰路に着いた。途中王宮で知った顔を見つけては挨拶を交わしていく。馬車の中で、そうレティシアに問われ、ミリアはたじろぐ。少しだけ頬を染めながら答える。
「騎士団の応接室が空いているのでと言われたの。でも、お天気がよかったから外で昼食にしようってなったの。だから中庭に行ったわ」
「中庭・・・懐かしいわ」
レティシアはにこりと微笑む。
「アースから色々と聞かされたわ。婚約を取り交わした翌日の事だったって。騎士団に中々行こうとしない団長様に、差し入れを持っていくって約束していたんでしょう?騎士団の稽古場から貴女を抱えて嬉しそうに中庭に行ったって」
「そうね。その時に中庭に行ったのよね。羨ましいって言っていたから膝枕もしてあげたわ」
「だからなのね・・・アース様が随分と詳しくその時の事を話すんだもの。目撃者が多数ってことね」
「えぇ、皆に見られているのもお構い無しで、堂々と甘えているのはその時からかわらないわね」
苦笑するレティシアに、ミリアはさらに聞いてみたかった事を口にする。
「そう言えば、なんでもアバンス団長が挨拶帰りの貴女を帰してくれないまま、公爵家に住むことになったのでしょう?」
「そうよ。その日の夜からずっと一緒に寝ているわ。帰して貰えないまま夜には寝台に引きずり込まれたの」
「ひ・・・引きずり込まれた・・・じゃ、じゃぁ、そ、その日にすでに?」
「ん?すでにって?」
「そ、その・・・」
ミリアは言いづらそうに顔を真っ赤にしていた。それを見てレティシアは察したわけだ。
「その日はただただ抱き締められて眠っただけよ?それに、未だに初夜は迎えてないのよ」
「え?どうして・・・」
「結婚式・・・あげられなかったでしょう?」
「そうね・・・本当に残念だわ。貴女の結婚式楽しみにしていたのに」
「仕方がないわよ。結婚式をあげれなかったことで、慣例通りに行かなかったことが、ウィルの中で引っ掛かりを持っているみたいでね・・・未だにそういう話にはならないの」
「そう・・・でも、団長様も、随分とお強いのね」
「強いって?」
「だって、あんなに好意を隠さずにいるのに、未だにそういう展開にならずにいるのでしょう?もしかして、仕切り直ししてからと耐えていらっしゃるのかと思って」
「あぁ・・・結婚式やり直しをしたいとは何度も言っていたわね」
「きっとやり直しして、雰囲気をつくってって構想を練っていそうね」
レティシアとミリアが馬車で公爵邸に着く。
「お手をどうぞ」
「・・・何故ここにいるのかしら?」
「えっ!?団長様!?」
ニコニコしてレティシアに手を差し出しているのは紛れもなくウィルフレッドその人である。誰が想像していただろうか。話題の中心になっていた本人が馬車の扉から出るレティシアのエスコートをしようとうずうずして待っている事など。
「だって馬で単騎で駆けた方が早いに決まっているだろう?」
「そういうことじゃないわよ・・・」
呆れるレティシアを他所に、ウィルフレッドはご機嫌だ。
「では、レティシア、またお茶でもしましょうね」
「えぇ、今日は楽しかったわ」
2人は挨拶を交わし、伯爵邸の馬車に乗り換えたミリアは帰っていった。
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