騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
523 / 544

事件と後遺症

しおりを挟む


「・・・アバンス団長は、結婚式前夜に王宮への呼び出しに応じることになったのです」


アイオロスの言葉にソルディオは聞き入った。


「結婚式の前夜に・・・ですか」

「えぇ、団長は夫人に送り出されて王宮へと来た時には、侵入者は騎士達によって捉えられてはいましたが、事件はそこで解決とはなりませんでした。新たに問題が起きたのです。あの時の事は・・・俺も悔やんでも悔やみきれません・・・」


アイオロスの悲痛な表情に、ソルディオも続きを促せずにいた。少しの間、沈黙。そしてやっとの思いでアイオロスが口を開いた。


「主犯はレイバン様だったのです」

「レイバン様・・・?って、イズヴァンドへ行かれたレイバン様・・・ですよね?」

「えぇ、そうです。レイバン様は、俺の前任の副騎士団長でした。彼は・・・要職に就きながら、陛下の命を狙っていたのです。俺は気付けなかった・・・ずっと長年恨みを持ち続けてきた事も知りませんでしたが・・・当時、レイバン様の言動の異変にも気付けなかったんです。ずっと世話になってきた上司で、俺の剣の師匠でもあって・・・兄のような存在でもありました」


悔しそうに表情を歪め、拳は強く握りしめられていた。慕っていた人物。間近にいたはずなのに止めることもできなかった悔しさ。


「随分と辛い思いをされたんですね・・・俺だったら辺境伯様が過ちを犯すということになるんですもんね・・・あり得ない・・・そんなの耐えれませんよ・・・」


ソルディオも、クレイドルがと想像してみるも、想像がつかない。第二の親ともいえるようなクレイドル。辺境で成長し、実力も認めてくれて、沢山の事を任せてくれた。アイオロスが苦痛の表情を浮かべ悔やみきれないと言っていたのも納得がいく。


「でも、起きてしまった事を今更どうにもできません。感情を抑えきれずすみません。話を戻しますね。団長の結婚式・・・その事件の件で、聞き取りや調査、根回しに報告、後処理・・・全て終わったときには結婚式の予定だった当日の夕方にさしかかっていました。結局招待客には中止とお伝えするしかなく、同じ結婚式をやり直すにはすぐには無理だとの判断をされたのです。公爵家ですからね・・・招待客も多ければ、社交界の重鎮や他国の賓客などもいたと聞いています。事件の事は秘匿され、詳しくは公表されていませんが、王宮に侵入者があり、陛下の警護が必要になった旨は公表されました。団長としての責任と指揮のために離れることができなかったと、説明にも、招待客は仕方のないことと納得はいただけたそうなのですが・・・団長自身が立ち直るのに時間を要しましたね・・・あれは・・・後遺症のようなものです」


アイオロスが仕方のないことだと、最後には苦笑しながら話していた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

出ていけ、と言ったのは貴方の方です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
あるところに、小さな領地を治める男爵家がいた。彼は良き領主として領民たちから慕われていた。しかし、唯一の跡継ぎ息子はどうしようもない放蕩家であり彼の悩みの種だった。そこで彼は息子を更生させるべく、1人の女性を送りつけるのだったが―― ※コメディ要素あり 短編です。あっさり目に終わります  他サイトでも投稿中

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...