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コルテオが守ったもの
しおりを挟む「まるで道具のような物言いだわ」
過去の話を聞き、クレイドルとエルサはよくもまぁ、そんな家柄でコルテオがこんなに素直に育ったものだと思った。だが、裏を返せば、そんな環境だったからこそ、コルテオの自己肯定感が低いのも頷ける。
「コルテオ様、何も気に病むことはないですわ」
「え?・・・どうしてです?」
「そうだな、俺もそう思う」
クレイドルもエルサも、コルテオの心残りである事に対し、気にすることはないと言う。
「どうしてでしょうか・・・」
「考えても見ろ、お前の兄はいくら両親がそういう育て方をしたと言っても、血をわけた兄弟にそういう態度を出す必要はなかったはずだ。その性格は兄そのものだ。まぁ・・・それまでのツケがまわってきたということだ。コルテオの元婚約者の女の家もおかしいが、娘のほうは、兄に懸想していたのかもしれんな」
「兄に、ですか?」
「えぇ、私もそう思います。コルテオ様との婚約がなくなれば・・・それこそ傷を追わされたなどとなれば、ハッサル家の有責として破棄もできましょう。それに、責任の取り方として兄と結婚させろという妥協案を出したように見せかけたのではと。元婚約者の女性にとってはそれは妥協案ではなく、略奪です。婚約者のいる男性を正当な理由に見せかて奪う。そして、それを相手の父親が入れ知恵していたとすれば?」
「俺もそう考える。相手の家からしてみれば、騎士であるコルテオが娘を守りきれなかった。傷物にされたと言い、提携する事業を有利な条件に向けることができる。それこそハッサル家の世間の、社交界での体裁が悪くなれば大変だろう?とでも言ったと推測すれば」
「ハッサル家は嵌められたと・・・」
「そう言えるな」
コルテオはクレイドルとエルサの推測に呆然とする。
「だが君は一つ守ったな」
「何を・・・でしょう?」
「自覚していないのか。兄の元婚約者はそんな家に嫁がずにすんだ。結果論にしか過ぎないが、今となっては良いことだったかもしれないぞ?想いを寄せたのはコルテオの兄だけで相手は渋々だったかもしれないからな」
「・・・そうなのでしょうか・・・」
「コルテオ様は悪くない。利用されただけですわ」
「話してよかった・・・なんだか気が軽くなった気がします」
「それでよい」
「えぇ、コルテオ様は、これから幸せになるんですよ?もちろん私とです。だから、他の女性の事はもう考えちゃだめですからね?」
人のいいコルテオの事だ。責任をとって自分が娶るなどと言いかねないと不安に思ったのだろう。胸にぎゅうぎゅうと押し付けるように腕を掴んでいる。上目使いで見てくるのは反則だとコルテオはたじたじだ。そしてその感触に気絶しそうになる。だが、クレイドルの一言で我に返った。
「エルサがこれだけ君を欲しがっている。さぁ、どうやってハッサル家に縁談を申し込んでやろうか」
クレイドルの瞳はどこか楽し気で、何かを企んでいるようにも見えた。
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