507 / 543
家族ができるという事
しおりを挟む「それはめでたいな・・・でも、よかったなコルテオ」
通信機の向こうから、近衛騎士団長であるウィルフレッドが柔らかな声で話しかけて来る。コルテオは定期的に通信機の状況と、隣国と辺境との様子など踏まえて報告をしている。その話の中でエルサが連れ去られそうになった事を話し、隣国の王子であるダリオがなにか仕掛けてくることがあり得る可能性を話した。これについてはウィルフレッドも怪訝な表情になったのがわかるように声にも現れていた。注意深く観察する上で、なにか小さな事でも報告することで手打ちとした。そして、エルサと婚約する運びとなった話へとなった。
「あぁ、まさか僕を選んでくれるなんて思わなくて。顔が緩んでしまうんだ・・・どうすればいいかな・・・」
「別にいいんじゃないのか?俺だってシアの前では表情筋が言うことを聞かない。なんなら緩みっぱなしだ」
「フッ・・・知ってる」
「だろう?」
「でもさ・・・信じられないし夢みたいだけど、10以上も離れているのに僕でいいのかなんてまだ思うんだ・・・」
「それを言うなら俺だって10以上離れているぞ?だが、シアはそんな事気にしていない。俺の方が子ども扱いされているような時さえあるんだからな」
「以前のウィルフレッドからは考えられない事だね。本当に女性に興味がない奴だったのに」
「確かにな。シアは特別だ・・・運命だったんだ・・・」
「そうだね。僕だってエルサ嬢とは運命なのかなって思える」
「本当によかったな・・・お前に本当の意味での家族ができる事、俺は嬉しいよ」
「・・・あぁ・・・ありがとう」
ウィルフレッドはコルテオとは騎士団に入団してから、いや、もっと、前。学園時代からの付き合いである。剣に学問にと切磋琢磨しあった仲。もうかれこれ15年来の友人。コルテオの家庭環境についても知っていて、兄が優秀すぎる故の苦悩なども知っていた。自分にも弟がいる。ルシアンにも同じ感情を抱かせないようにと思ったのを覚えている。まぁ、アバンス公爵家にはその心配がないくらいに、弟ルシアンは両親に愛されている。その心配はないのだが、次男という立場ゆえ、嫡男とは同じ待遇にはならない事を、将来悲観することはあるだろう。その時は、次期公爵の地位は弟に譲り、自分は騎士団長として一生を終える。ずっとそのつもりで婚約者も作らなかった。女性に興味がない素振りをしていたが、この人だと思う女性に巡り会えなかったというのが正しい表現だろう。恋愛結婚し、今でも子どもの目の前で堂々とイチャつく両親に辟易することもあるが、羨ましく思うのも事実。レティシアと念願叶って夫婦になれた。最近では、騎士団長で一生を終える事は、ウィルフレッドの中にはその選択肢はないものとなっていた。騎士団長でいるうちは、わざわざ王城に出向いてレティシアと離れなければいけない。その時間がウィルフレッドにとっては苦痛なのだ。
11
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
『番外編』イケメン彼氏は年上消防士!結婚式は波乱の予感!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は年上消防士!・・・の、番外編になります。
結婚することが決まってしばらく経ったある日・・・
優弥「ご飯?・・・かぁさんと?」
優弥のお母さんと一緒にランチに行くことになったひなた。
でも・・・
優弥「最近食欲落ちてるだろ?風邪か?」
ひなた「・・・大丈夫だよ。」
食欲が落ちてるひなたが優弥のお母さんと一緒にランチに行く。
食べたくないのにお母さんに心配をかけないため、無理矢理食べたひなたは体調を崩す。
義母「救護室に行きましょうっ!」
ひなた「すみません・・・。」
向かう途中で乗ったエレベーターが故障で止まり・・・
優弥「ひなた!?一体どうして・・・。」
ひなた「うぁ・・・。」
※お話は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
彼女が心を取り戻すまで~十年監禁されて心を止めた少女の成長記録~
春風由実
恋愛
当代のアルメスタ公爵、ジェラルド・サン・アルメスタ。
彼は幼くして番に出会う幸運に恵まれた。
けれどもその番を奪われて、十年も辛い日々を過ごすことになる。
やっと見つかった番。
ところがアルメスタ公爵はそれからも苦悩することになった。
彼女が囚われた十年の間に虐げられてすっかり心を失っていたからである。
番であるセイディは、ジェラルドがいくら愛でても心を動かさない。
情緒が育っていないなら、今から育てていけばいい。
これは十年虐げられて心を止めてしまった一人の女性が、愛されながら失った心を取り戻すまでの記録だ。
「せいでぃ、ぷりんたべる」
「せいでぃ、たのちっ」
「せいでぃ、るどといっしょです」
次第にアルメスタ公爵邸に明るい声が響くようになってきた。
なお彼女の知らないところで、十年前に彼女を奪った者たちは制裁を受けていく。
※R15は念のためです。
※カクヨム、小説家になろう、にも掲載しています。
シリアスなお話になる予定だったのですけれどね……。これいかに。
★★★★★
お休みばかりで申し訳ありません。完結させましょう。今度こそ……。
お待ちいただいたみなさま、本当にありがとうございます。最後まで頑張ります。
つがいの皇帝に溺愛される皇女の至福
ゆきむらさり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
王太子ハロルドの淫らで優雅な王宮事件簿 ~背徳の王子はすべての愛を支配する~
月夜野繭
恋愛
「さぁ、私を凌辱せよ」
王太子ハロルドは一見地味で穏やかな好青年。けれど、閨では淫らで傲慢な支配者に豹変する。
いつものように腹心の近衛騎士たちへ見せつけながら妻を抱いていたハロルドだが、今夜は別のプレイを企んでいて――?
強烈なカリスマで周囲の人間を魅了し、淫蕩のかぎりを尽くす背徳の王子ハロルド。その日々を彩るいかがわしい事件をここに記録する。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※「背徳の王子は支配する」:男性4人、女性ひとりの複数プレイ(近衛騎士×王太子×王太子妃)
※「堕落の王子は耽溺する」:義父と嫁のNTRプレイ(辺境伯×義理の息子の妻←義理の息子)
※1話ごとの読み切りです。ハロルドにまつわる短編集として新作ができたら追加する予定……です。
※ムーンライトノベルズにも掲載しています。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる