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家族ができるという事
しおりを挟む「それはめでたいな・・・でも、よかったなコルテオ」
通信機の向こうから、近衛騎士団長であるウィルフレッドが柔らかな声で話しかけて来る。コルテオは定期的に通信機の状況と、隣国と辺境との様子など踏まえて報告をしている。その話の中でエルサが連れ去られそうになった事を話し、隣国の王子であるダリオがなにか仕掛けてくることがあり得る可能性を話した。これについてはウィルフレッドも怪訝な表情になったのがわかるように声にも現れていた。注意深く観察する上で、なにか小さな事でも報告することで手打ちとした。そして、エルサと婚約する運びとなった話へとなった。
「あぁ、まさか僕を選んでくれるなんて思わなくて。顔が緩んでしまうんだ・・・どうすればいいかな・・・」
「別にいいんじゃないのか?俺だってシアの前では表情筋が言うことを聞かない。なんなら緩みっぱなしだ」
「フッ・・・知ってる」
「だろう?」
「でもさ・・・信じられないし夢みたいだけど、10以上も離れているのに僕でいいのかなんてまだ思うんだ・・・」
「それを言うなら俺だって10以上離れているぞ?だが、シアはそんな事気にしていない。俺の方が子ども扱いされているような時さえあるんだからな」
「以前のウィルフレッドからは考えられない事だね。本当に女性に興味がない奴だったのに」
「確かにな。シアは特別だ・・・運命だったんだ・・・」
「そうだね。僕だってエルサ嬢とは運命なのかなって思える」
「本当によかったな・・・お前に本当の意味での家族ができる事、俺は嬉しいよ」
「・・・あぁ・・・ありがとう」
ウィルフレッドはコルテオとは騎士団に入団してから、いや、もっと、前。学園時代からの付き合いである。剣に学問にと切磋琢磨しあった仲。もうかれこれ15年来の友人。コルテオの家庭環境についても知っていて、兄が優秀すぎる故の苦悩なども知っていた。自分にも弟がいる。ルシアンにも同じ感情を抱かせないようにと思ったのを覚えている。まぁ、アバンス公爵家にはその心配がないくらいに、弟ルシアンは両親に愛されている。その心配はないのだが、次男という立場ゆえ、嫡男とは同じ待遇にはならない事を、将来悲観することはあるだろう。その時は、次期公爵の地位は弟に譲り、自分は騎士団長として一生を終える。ずっとそのつもりで婚約者も作らなかった。女性に興味がない素振りをしていたが、この人だと思う女性に巡り会えなかったというのが正しい表現だろう。恋愛結婚し、今でも子どもの目の前で堂々とイチャつく両親に辟易することもあるが、羨ましく思うのも事実。レティシアと念願叶って夫婦になれた。最近では、騎士団長で一生を終える事は、ウィルフレッドの中にはその選択肢はないものとなっていた。騎士団長でいるうちは、わざわざ王城に出向いてレティシアと離れなければいけない。その時間がウィルフレッドにとっては苦痛なのだ。
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