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はじめて聞く言葉に
しおりを挟む「いえ、勘違いではありませんね。本気にしてくださいませ」
顔を上げたエルサが、コルテオの瞳を捉えて離さない。今にも泣き出してしまいそうな、物言わぬ瞳に見入ってしまった。
「本気って・・・一体何に・・・」
「好きなんです!」
「はっ、はぁっ!?・・・ま、待ってください!エ、エルサ嬢が、僕を・・・好き・・・?」
「はい・・・」
「では結婚とは・・・」
「もちろんコルテオ様とです」
「・・・嘘でしょう・・・」
「嘘ではありませんし、夢でもありません」
夢かと口に出す寸での所でエルサが先に言った。これは夢ではないと。コルテオはただただ放心状態だ。何も言わないコルテオに、エルサは段々と不安になっていく。
「私ではダメでしたでしょうか?」
「そ、そんなはずないでしょう!」
「では夫になってくれますか?」
「もちろん!・・・と言いたいところですが」
そこまで聞いて、エルサの手に力が入る。不安気に揺れるエルサの瞳。無意識にコルテオの肩口の服を握りしめていた。
「・・・僕なんかでいいんでしょうか?」
「コルテオ様がいいんです」
「しかし」
「コルテオ様じゃないとダメなんです」
「それほどに・・・」
コルテオは表情が緩んでいくのを自覚した。家格も年齢も容姿も何一つ釣り合わない。それでも自分を好きだと言ってくれた、選んでくれたことにじわじわと喜びが勝ってきた。
「あの・・・」
「はい・・・?」
「抱き締めてもいいですか?」
「一々聞かないでくださいませ」
エルサはコルテオの首にしがみつくように抱きついた。そしてそれをコルテオは受け止め、優しく抱き締め返す。エルサのサラサラの黒髪に、鼻先をくぐらせ首にすり寄るように甘えて見せた。
「コルテオ様にとっては、私はまだ子どもかもしれませんわ。でも、もう誰にも譲るつもりはありませんの。大人の女性になるまで少しだけ待っていてくれますか?」
「待つ必要はありませんよ。エルサ嬢は、もう十分に大人の女性です。僕のココが凄くうるさい」
コルテオは自身の胸に手をあてる。
「僕こそもう離してあげられませんよ?僕なんかを望んでくれる女性なんてこの先見つからないでしょう。それに・・・これ以上素敵な女性を僕は知りませんから」
コルテオはエルサの黒髪を一掬いし唇で触れた。
「告白する前から振られるのかと思いました」
「どうしてですの?」
エルサは顔をあげると不思議そうにコルテオを見つめる。可愛いなと思いながらも想いを告げる。
「エルサ嬢は僕を毎日振り回し、連れて回るのに、好きだなんて一言も言いませんでしたから。結婚なんて聞いて、他の男性とだとしか思えなくて」
「私、好きって一回も言わなかったのですか?」
「そうですよ?」
「・・・好きです、大好きです。だから、ずっと側にいてくださいね?」
「えぇ、もちろんです、僕もエルサ嬢が大好きですよ」
二人は幸せに満ちた笑みで見つめあっていた。
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