騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

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夢だったはず

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背を向けてしまったコルテオに、エルサはいてもたってもいられず立ち上がって、寝台の逆サイドへと回ってコルテオに視点を合わせる。


「んなっ!?」


あまりに近くにエルサが顔を近づけるものだから、コルテオは驚いて変な声が出てしまった。


「コルテオ様、どうしてそんなに可愛いのです!?」

「か、可愛い!?僕がですか?」


エルサが変な事を言い出した。コルテオは一体どうしたというんだという表情でエルサを見ている。


「照れる姿も可愛いですし、もしも私が妻だったらと考えるなんて、とても可愛いです!」


キラキラした笑顔でそう言っているエルサの方が可愛いのではとコルテオは思う。


「もう、これはいけません!」

「いけない?な、何がです?」

「他のご令嬢にとられてしまいますわ。うかうかしてられません!」


一体何の話をしているんだとコルテオは困惑した。何をとられてしまうのか。自分が可愛いと言っている事と何か関係があるのか。それからしばらく、エルサは何か考え事をしていた。そんなエルサの様子を眺めながら、薬の作用なのか、次第にコルテオを眠気が襲う。気付けば眠ってしまっていた。次に目が覚めた時、外は薄暗くなっており、部屋をぐるっと見回すと誰もいなかった。あぁ、都合のいい夢を見ていたんだなと現実逃避する。エルサが自分の事を可愛いだなんて言うはずがない。コルテオももうすぐ30という歳だ。可愛いなどと言われるような歳ではない。こんな都合のいい夢を見てしまうなんて、どうかしている。天井をぼんやり眺めながら、情けないなと考えていた。



コンコンコン


ノックの音がしたかと思えば、入ってきたのはエルサだった。


「コルテオ様、目が覚めましたのね?」

「はい、薬の作用でしょうか、気付けば眠っていたようです。おかげで都合のいい夢を見ました」

「都合のいい夢?」


問いかけながらエルサは寝台へと近づき、近くの椅子に腰かけた。


「はい、エルサ嬢が僕の事を可愛いって言うんですよ。もう30にもなろうとしている僕に向かって可愛いだなんて、どうしてしまったのかと思いましたよ。夢だと気付いて納得しました」

「可愛い?言いましたよ」

「へっ?・・・言った?実際に?」

「えぇ、眠る前にそう話しました」


夢ではなかった。可愛いと言われていた。喜んでいいものかはわからないが、夢ではなかったのだ。コルテオはどう反応すればいいのかもわからず呆然としていた。





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