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妻だったら夫にするなら
しおりを挟む「剣など取らなくてもいいのですと、守るからと言われると、腹が立つんです。私はそんなに弱く見えますかと・・・女性だって守られてばかりではいけないのです。自分の身は自分で守れるくらいでなくては、夫になる方は自身の仕事を全うできない・・・そう思うのです」
「すばらしい考えだと思いますよ。剣を振るうエルサ嬢はイキイキしている。僕はそんな貴女を見ているのが好きです。貴女から剣を取り上げて、囲って守る?そんな勿体ない事しませんよ。僕は、エルサ嬢には好きに生きて欲しいし、諦めてほしくないんです。貴女が好きなこの辺境領を・・・自身の手で守りたいと思う心。僕はとっても誇らしいですし、自慢したいですよ?」
「自慢・・・?誰に自慢なさるのです?」
「へっ!?・・・あ、いや・・・言葉のアヤです。忘れてください」
「どんな自慢になるのです?」
「・・・」
「コルテオ様?」
エルサに問いかけられるもコルテオは黙ったまま動かない。コルテオは非常に困っていた。まさか、エルサが妻だったらなどと勝手に想像していたなどと知られたら気持ち悪がられるかもしれない。何と返せば良いのか。コルテオは必死に頭をフル回転させる。だがいい言葉が見つからず、もう、どうにでもなれと本心をぶちまけた。
「そりゃぁ、自慢しますよ!こんな綺麗で可愛くて、芯のある女性で、領民思いで、努力を怠らない妻なんて・・・願ったら手に入るわけなじゃないんです。もしもそんな女性が妻ならば、僕は周りに見せびらかしてまわりますよ。夜会やパーティなどでは片時も離しません。ダンスは僕とだけです。他の男性とは一切踊らせません。指をくわえて見ていればいいんです」
顔を真っ赤にして、捲し立てるように話したコルテオを見て、エルサは目を見開いて驚いた。こんなにも感情をあらわにする事ももちろんだが、何よりもたった一言がエルサの心の壁を簡単にぶち破っていった。
「・・・妻・・・」
「す、すみません!勝手に想像して・・・エルサ嬢が妻だったらなんて・・・叶うはずもない夢物語を毎日思っていたんです。気持ち悪いでしょう?十以上も離れた男からこんな事を思われているなんて・・・」
「・・・」
エルサは感情の見えない瞳でじっとコルテオを見つめる。
「本当にすみません、忘れてください!」
コルテオはエルサの両手から手を引き抜くと寝返りを打つように背を向けた。その様子を見ていたエルサは、気付いてしまった。
(何これ・・・可愛すぎない?もう抱きしめちゃいたい・・・でも、夫婦でもないし、ましてや婚約者でもない。勝手な想像って言うけど、私だってコルテオ様を誰にもあげるつもりなんてないわ・・・随分と前から・・・夫にするならこんな人って想っていたもの・・・私を、私の考えさえまでもすべてを認めてくれた唯一の人・・・そのままでいい・・・レティシア様が言っていた事がよくわかる。ありのままで、そのままで全てを愛されるって、こんなにも愛おしい気持ちになるんだわ・・・私の未来の夫は・・・可愛い!!!)
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