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らしさとは
しおりを挟むドーランが去った後の救護室で、二人きりになったコルテオとエルサ。エルサはコルテオが横になる寝台の縁に座り、手は握ったまま身体ごと振り向く。コルテオの手はエルサの両手に包みこまれて足にのせられていた。その温かさに、自然と笑みがこぼれる。
「コルテオ様、私、ちっとも令嬢らしくありませんよね?」
少しだけ眉を下げながらエルサはコルテオの表情を伺っていた。コルテオはそんな様子のエルサに対し、首を傾げる。
「もっとおしとやかで、慎ましやかで・・・もっと見た目にも気を使って・・・こんな荒れた手と、剣を振り回すような女、誰も相手にしませんわ」
「エルサ嬢は、ご令嬢らしい女性になりたいのですか?」
「・・・なりたいわけではありませんけれど」
「では、そのままのエルサ嬢でいいのではないでしょうか?」
「このまま・・・ですか?」
「えぇ・・・エルサ嬢はそのままでいい。これ以上素敵になって、注目を集めなくてもいいと思うんです」
嬉しい言葉を言われているようだが、コルテオは何故かこちらを見ようともせず、そっぽを向いている。
「どうしてですか?やはり、私には令嬢らしくしているのが似合わないという事でしょうか?」
「いいえ!とんでもない!エルサ嬢は今のままで男性が寄ってくるんです。令嬢らしくなんて、それを磨いてしまったら、百戦錬磨ですよ・・・僕なんか近付くことすら許されないくらい遠い存在になってしまいますから」
「どうして遠い存在になるんです?」
「僕なんかより見目がいい男性がたくさんいるんですよ。その上、地位が高かったり、条件のいい男性はもっといます・・・僕なんか簡単に蚊帳の外でしょう」
少しだけふてくされたような口調と表情を見せて落ち込む素振りをコルテオは見せた。そんな表情が新鮮で、これまで見た表情のどれにも当てはまらなかった。
「見目のいい男性が全てではありませんし、地位の高い男性の妻になんてなったら大変なだけです。社交に勤しむよりも剣を取って闘う方が性にあってます」
「エルサ嬢は・・・令嬢らしくないという事を恥じているんですか?剣を取る女性が男性から好まれないのではないかと気にしているのですか?」
「それは・・・」
「気にする必要ありませんよ。貴女はしっかりと未来を見据えている。そして、心はもう既に辺境伯当主そのものです」
コルテオの笑顔に、エルサは本心を語りだす。
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