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兄の婚約者
しおりを挟む「結局婚約者の令嬢はどうなりましたの?」
「今は・・・兄の妻として伯爵夫人として実家にいます」
「・・・そうなのですか・・・」
エルサは疑問を持つ。では、お兄さんの婚約者だったご令嬢は?
「お兄さんの婚約者の方は・・・」
「兄とは・・・婚約解消になりました。どちらにも非のない事。婚約解消という話に。彼女は子爵家のご令嬢でした。ハッサル家の長男に捨てられた女とレッテルを貼られ、社交界での噂のまとになってしまったんです。彼女には大変申し訳ない事をした」
「その方は今はどうされているのです?」
「たまたまの偶然か、はたまた温情なのか・・・ウィルフレッドの家にいるんです」
「アバンス公爵家に?」
「はい・・・メイドとして仕えているそうです。それを知ったのは随分あとになってからでした。最近は夫人の世話係なんだそうです」
「夫人?アバンス公爵夫人?」
「いえ、レティシア夫人のほうですよ」
「そうなんですか・・・」
「偶然知ったんです。ウィルフレッドがあの有名な夜会で夫人を手に入れてから、すぐ屋敷に住まわせるようになった時、慣れない公爵家での暮らしに少しでも馴染めるようにと、歳の近いメイドをつけたそうで、それが彼女だったそうです」
「・・・伯爵夫人としての未来があったでしょうに・・・」
「えぇ、でも、ウィルフレッドから聞いた話では随分と夫人と仲が良いみたいで、焼きもちを妬くくらいなんだとか・・・」
「レティシア様らしいわ」
コルテオは、ふふっと笑うエルサの笑顔に釘付けになる。
「かつて愛した男を、義弟になるはずだった僕の婚約者にとられた。彼女の苦しみは・・・僕には救ってはあげられませんでした。アバンス家での生活が良いものになっただけでも感謝します」
「そうですね。無理矢理にでも結婚をとはやっていれば、歳のはなれた方に娶られたか、後妻など、そう幸せには思えない結婚になっていたかもしれません。それからしてみれば、彼女にとってはいい環境に身をおくことができたのは幸いだったかもしれませんね。彼女ご結婚は?」
「まだだと聞いています。ひとつ心残りとするならば、彼女の女性としての普通の幸せを奪ってしまった事・・・でしょうか」
「コルテオ様が自らの手でとは考えなかったのですか?」
「・・・それも考えはしましたが、僕はいずれ伯爵家を出て平民になるんです。そんな男の元に嫁いで幸せになれますか?本来なら伯爵夫人になる未来があった方なのに」
「幸せは人それぞれです。他人が決めるものではありません」
エルサのその言葉にハッとする。そうだ。万人が幸せだと感じることが、絶対に全ての人に当てはまるわけではない。目の前のエルサのように、剣を手に取る令嬢だっている。どこにだって、回りとは違う自分を持っている人はいるものだと。一回り近く歳の離れたエルサからそれを教わるとは、まだまだ未熟だなとコルテオは心の仲で反省していた。
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1/28START
『好きなのは貴方じゃない』
「お前の嫁ぎ先が決まった」
侯爵である父がそう言った。
スティファニアは、その時絶望で崩れ落ちそうになる。
想い描いていた未来はもう来ない。
諦めを抱いて辺境に来ると、使用人みんなが親切でとっても居心地がいい。だが、夫になった男爵にはひと目もかからないまま時間だけが過ぎていく。
「見ない顔だな、新入りか?」
夫は私ではない女を愛している。だから必死に心を保とうとした。
私が好きなのは貴方じゃない。
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