487 / 544
フィーノを追えば
しおりを挟む立ち去る男達の背を見つめ、姿が見えなくると、コルテオの手から剣が滑り落ちる。そしてコルテオは倒れた。額には汗が滲んでいた。
「コルテオ様!?」
急に崩れ落ちるように倒れたコルテオにエルサは驚く。頭を抱え、自身の膝に乗せる。
「コルテオ様!大丈夫ですか!?お怪我なされたのですか?しっかりしてください!」
「・・・っ、・・・エルサ・・・嬢、お怪我ありませんか?」
「私はなんともありませんわ!」
「なら・・・良かった」
エルサは焦りを見せながらも、このままではいけないという事もわかっていた。
「フィーノ!誰か連れてきて!」
エルサは近くに待機していた愛馬のフィーノに声をかける。フィーノは承知したとばかりに小さくブルッと反応すると、勢い良く駆けていった。まるで言葉がわかっているかのように。
「コルテオ様、頑張ってください!直に人が来ますから!」
「えぇ・・・」
コルテオは依然苦しそうな表情を見せている。
そして、砦で見回りをしていた騎士がフィーノに気付く。
「ん!?う、馬が逃げ出してっ・・・あれはフィーノ?」
「なんだって?」
「なに言ってるんだ。フィーノは今、エルサ様と一緒にいるはずだぞ」
「でも、じゃああれは・・・」
騎士達の視線の先には、見間違えようがないほどに、誰もを寄せ付けないと有名なフィーノがいた。しかも何度も近付いては離れて振り返るという行動をとる。
「なぁ、エルサ様とコルテオ様に何かあったんじゃ」
「まさか・・・でも、絶対ないとは言えないな」
「だよな、ついていってみるか?」
「そうだな。何もなければなかったでいいのだし」
騎士達はフィーノのあとを別の馬にまたがってついていく。ついてきているのを確認すると、フィーノは振り向かなくなった。そのままついてこいと言わんばかりに皆を先導していく。厩舎の近くまで来ると、フィーノが突然勢い良く駆け出した。
「おい、フィーノ!?」
「ちょっと待ってくれ、どこに行くんだ!」
騎士達が慌てて追いかけようとした矢先、フィーノがゆっくりと立ち止まりじっと何かに見入っていた。
「おい!あれって、エルサ様とコルテオ様じゃないか!?」
騎士達は、地面に横たわるコルテオを心配そうに見つめるエルサを見つけ、慌てて駆けよった。
11
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!?
本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる