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認めてくれたのは

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「砦ですか?」

「えぇ、国境にある砦です」


朝食の席で、今日の予定を聞かれたコルテオは特になにもないと答えていた。それを聞いたエルサがそれなら砦を見てみないかと提案したのだ。


「攻防の要のような場所に僕が赴いてもいいのですか?」

「もちろんです。コルテオ様はもう辺境領の一員ですから」


そして朝食を終え、二人は馬に乗り砦へと出掛けることにしたのだが。


「とってもいい子ですね」

「えぇ、フィーノはとてもいい子で・・・」


エルサの言葉が切れたことに首を傾げるコルテオ。


「どうされました?」

「いえ・・・ねぇ、フィーノ、コルテオ様はいいの?」


エルサは何を言っているのだろうと見守る。そしてエルサは目を見開いて驚いていた。


「コルテオ様、とても珍しいことです」

「どうなされたのですか?」

「フィーノは父と私以外に触れられることを嫌がるのですが、コルテオ様は大丈夫なようです」

「え?そうなのですか?確かに先ほど撫ではしましたが」


そう言ったコルテオの手を持ち上げるようにフィーノは頭を腕の下から潜らせる。


「おわっ!?」

「まぁ、フィーノ、もっと撫でて欲しいの?随分と甘えるじゃない」


エルサはその様子を見てクスクス笑っている。コルテオはエルサの笑顔に見惚れながらグリグリと頭を押し付けてくるフィーノを撫でていた。エルサと別々の馬で出掛けようと馬を見て回っていたが、どうにもフィーノがコルテオから離れない。


「フィーノ、どうしちゃったの?いつもなら誰にも懐かないって言うのに」

「随分と気に入ってもらえたみたいで嬉しいですね。では、僕がフィーノでエルサ嬢は他の馬にしますか?」

「そうですね」


エルサがそう言って回りを見渡し始めると、これまでコルテオにすり寄っていたフィーノが今度はエルサに向かってぐいぐいと押してくる。


「ちょ、ちょっと、フィーノ!?」


フィーノの力が強く、よろけたエルサを慌ててコルテオが支える。


「本当にどうしちゃったの?」

「んん・・・これは相乗りしろという事でしょうか?」

「相乗り?」

「僕にもエルサ嬢にも他の馬に乗って欲しくない、だとすると、一緒に乗れと・・・」

「そうなの、フィーノ?」


フィーノはそうだと言わんばかりにブルルッと反応をする。


「だそうです、申し訳ありませんが砦までご一緒頂けますか?」

「え、えぇ、僕は構いませんが・・・」


コルテオは必死に冷静を装っていた。一緒にということは、必然的に身体が密着する事だろう。冷静でいられるだろうか。コルテオはそれが気がかりでならなかった。




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