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大胆な行動
しおりを挟む「そんなに熱かったです?」
顔を真っ赤に染めたコルテオを見て、手に持ったフォークに刺したオムレツを今度は自分の口に運ぶ。だが、さほど熱くはない。エルサは首を傾げた。その瞬間隣からどさっと何かが床に落ちた。
「えっ?・・・コルテオ様!?どうされましたの!?」
コルテオは、全身を真っ赤に染めたまま椅子から崩れ落ちるように床に倒れていた。尚、両手で顔を隠している。エルサは体調が悪いのかと慌てて椅子から立ち上がり、コルテオの顔の前に膝をつく。
「大丈夫ですの?」
「は、はい・・・おかまいなく」
「体調が悪かったのですか?」
「いいえ・・・そうではないんですが・・・しばらくこのままでいれば落ち着きますので」
「そうですか・・・」
しばらくとはどれほどだろう。エルサは顔を隠すコルテオの姿をじっと見つめたまま待っていた。だがいつまでたっても一向に起き上がろうとしない。やはり睡眠不足だったのかと結論付けた。
「そのままでは寝づらいでしょう?失礼しますね」
「なっ!?」
コルテオの頭が持ち上げられたかと思えば、柔らかな感触がある。目を向けずともわかる。これは足だ。いわゆる膝枕というもの。
「エ、エ、エルサ嬢!?」
「なんでしょう?」
「何をなさって・・・」
「何って、枕ですわ」
「ま、枕・・・」
「コルテオ様には食事ではなく、まずは睡眠だったようですわね」
コルテオが椅子から落ちて床に倒れたのは寝不足ではない。エルサにあーんをされ、あまつさえそのフォークをエルサも口にした。間接キスというものだ。コルテオは女性に免疫がないため、その行為に過敏に反応したのだが、当のエルサは何も気に止めてはいない。
「しばらく休めばよろしいのでしょう?このまま少し眠ってくださいませ。人払いもしましたし、ここは日当たりもいいですから」
コルテオは思った。そういうことじゃない。そして、こんな状況ですやすや眠れるわけがないと。心拍数はあがったまま、ドキドキがおさまらない。緊張しまくって身体が硬直するコルテオに対し、エルサは全く違う事を思っていた。倒れるまで熱心に打ち込む姿・・・レティシア様から聞いたアバンス団長の無茶をしたのってこういう事なのね!と。はっきり言おう。全く意味合いが違う。それにコルテオは倒れるまで無茶も無理もしていない。ただエルサの行動に驚かされ、盛大に照れ、困っているだけなのである。この二人に何かが起きることは・・・あるのだろうか。
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