騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
475 / 544

使用人の噂話

しおりを挟む


そんなこんなで毎日マクシミリオンがエルサを追いかけ回してはソルディオが追い払う。いまだに婚約者のいないエルサに、使用人達、そしてクレイドルもどちらかと進展があるのではと期待しているのも事実である。そしてそれを知っている故に要らぬ横やりにはならぬようにと、コルテオはエルサから距離を取るようになると同時に、使用人達の噂話はどんどん増していく。





「二人のうちなら私はマクシミリオン様ね」

「そうそう高位貴族らしい立ち振舞いがあるわよね」

「それにアタックも熱烈だわ」

「でもソルディオ様も捨てがたいわよ?」

「そうよね、ずっと側におられたし」

「ソルディオ様のエルサ様に向ける視線はとっても優しいのよ」

「わかるわ!にじみ出てるものね」

「ねぇ、あの人は?」

「あぁ・・・」

「顔はまぁまぁよね」

「でもあんな引きこもりでは、エルサ様はお気にとめないんじゃない?」

「ずっと籠ってらっしゃるけど、何の研究なのかしら?」

「いかがわしいものでも作ってるじゃないの?」

「でも元は近衛騎士だっていうじゃない?」

「近衛騎士でも必要とされていれば王都に留められるわよ」

「そうよね。実力がなかったとかで厄介払いにあったのかもしれないわね」

「う・・・ん、ないわね」

「そうね」






廊下の掃除をしていたメイド達のおしゃべりが筒抜けで聞こえてくる。落胆する気持ちと、使用人達の言葉が妙にストンと胸に落ちてくる。ひどい言われようだが、それもまた事実であると自身が認めたせいであろう。感傷に浸っていると諌めるような声が聞こえてきた。


「あなた達、全部聞こえてるわよ!」

「お嬢様!」

「いつかうちのメイドはこんなにおしゃべりになったのかしら?」

「も、申し訳っ」

「謝るべきは私なの?違うでしょう?謝る気概があるなら今後は慎むべきね。人にはそれぞれ役割があるわ。あなた達の役割は使用人としての掃除!」

「は、はい!」

「いいわ、仕事に戻って」


カツカツと足音が遠退いていく。まさかかばってもらえるだなんて思っても見なかった。メイド達の言う通りだななどと自分でも自覚していたようなものだというのに。でも思い上がらないようにしなければとコルテオは思う。エルサはただ、使用人の愚行を注意したに過ぎない。辺境伯邸の品位が問われることなのだ。令嬢としてはただ当たり前の事をしたまでだろう。だがコルテオとしては顔の緩みが抑えられない。こんな表情見られては評価はマイナスだなど思いながら、研究室の中でよかったと心底胸を撫で下ろしていた。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...