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怖じ気づくレイラに

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「でも・・・」

両想いだと確認しあった二人だったが、レイラの表情にかげりが見えた。


「どうした?」

「私では・・・釣り合いがとれない・・・と思います」

「釣り合い?何でだ?」

「レイバン様は、これからイズヴァンドを発展させて領主になられるお方。いずれ貴族籍だって戻ってくるとお聞きしてます。私は・・・平民ですから」

「俺だって今は平民だ。いや、ずっと平民として生きてきた。逆に釣り合いとれているんじゃないか?」


レイラが悩んでいる事がわからないとでも言いたげに、レイバンは不思議そうな顔で見つめている。相変わらず腕の中にレイラを閉じ込めたまま。


「ですが・・・王都にいらっしゃったのです、その・・・お綺麗なご令嬢様方を見ていらっしゃったのですから・・・その・・私なんかでは・・・」

「綺麗なご令嬢?・・・それがなんだ?」

「えっ・・・?・・・いや・・・私では・・・見劣りしますわ!いずれ領主で、貴族になられるレイバン様に、私なんかが隣にいてはふさわしくありませんもの・・・」

「・・・俺の隣に立つものは、俺が決める。他の誰でもない、レイラでないとダメなんだ。これを断れるのも拒否できるのもレイラだけ。そうだな・・・受け入れる権利があるのもレイラだけだ」


レイラの瞳から静かに涙が流れた。


「いいのですか?私なんかで・・・いいのですかっ?」

「あぁ、レイラが嫌なら俺はこれからずっと独り身だな」

「そ、そんな!」

「この地も発展したところで後継がいないのであれば続いていかないしな」


レイバンのその一言が、レイラの心に刺さった。好きだと言う事を確認しあったばかりだというのに、これではまるで結婚して子どもをと望まれているようにしか聞こえない。流れた涙も簡単に引っ込んでしまった。いたずらに笑うレイバンを見て、ドキリとしたのもあるが、こんな風に笑う事ができる人だったのだと安心もした。


「・・・私、貴族の教育なんて受けてませんから、きっと迷惑かけます」

「教育?いつからだってできるだろう?それに、教育が行き届いた女がいたところで俺はそれに惚れる訳じゃない」

「・・・きっと恥をかかせます」

「恥か・・・失敗は誰にだってあるさ。俺は隣にレイラがいて欲しいと思うからいてもらう。誰にも文句は言わせない」

「・・・もっと綺麗な人が現れたら・・・」

「そんなので俺の心が揺らぐというなら、既に妻や婚約者なりいたことだろう。何故いなかったんだろうな?」


レイバンは優しい目でレイラを見つめている。


「騎士のお仕事が忙しかったのでしょう?」

「違うな。俺はずっと一人の女だけを想っていた。だから、他の女などどうでもよかっただけだ」


じっと見つめて来るレイバンの瞳から目が離せなかった。


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