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抗えないもの
しおりを挟むレイバンに押しきられ、レイラは抱えられたまま自室へと連れてこられた。過度の緊張のあまり、先程は馬に乗せられたままレイバンに身体を預けたまま眠ってしまっていた。それを思い出すだけで顔に熱が集まってくる。今の自分は真っ赤になっているだろう。野盗に犯されそうになっていた時とは違う緊張感。レイラがそんな事を考えているとは思いもせず、レイバンはレイラを抱えたまま、器用にドアを開ける。遠慮なくズンズンと部屋を進み、レイラを寝台へと静かに下ろした。
「レイラ、しっかり休め。身体が強張っている。あぁ・・・湯浴みするか?そうだな・・・ここにはメイドはいないし・・・年長の女の子でも連れてくる」
「あ、いいえ!大丈夫です。自分でできますから」
「そうか?・・・じゃあ・・・しっかりあたたまって、今日はこのまま休んでろ」
「は、はい・・・お手を煩わせまして・・・」
「気にするな。お前は子ども達を守ろうと必死だった。それだけだろう?」
「・・・は、はい・・・」
「イズヴァンドの民を救ってくれてありがとうな」
レイバンはそう言うと、方向を変え、部屋から出ていった。思い返せば軽率な行動だったかもしれない。子ども達に危害を加えられるかもしれないなら、自分がと、咄嗟に駆け出して盾になった。その結果このザマだ。だが、レイバンはそれに対して怒るでもなく、呆れるでもなく、ただただ礼を言った。レイラはそれが嬉しかった。自分でもレイバンの役にたったかもしれないと。とりあえず今は考えを切り替え、湯浴みすることにした。あの男達が触れた感触が今でも肌に残っているようで気持ち悪い。水で全てが洗い流れてくれればいいが、こればかりはそうもいかなさそうだ。きれいさっぱり記憶ごと流れてくれてもいいのになどと考えていた。湯浴みから出ると、途端に眠気が襲った。こんな時に眠気だなんて、自身に呆れてくる。だが、どう抗っても眠気には勝てなかった。レイラは寝台に横たわると、掛布もかけないまま眠りについてしまった。
「・・・レイラ?・・・湯浴みはしたようだが・・・眠ってしまったんだな」
様子を見に来たレイバンが、寝台で眠ってしまったレイラを見つけ、掛布をかける。
「俺が・・・いや、お前は幸せになるんだ。それまでは、俺がついててやるからな」
レイバンはぼそっとそう言うと、レイラの寝顔を目に焼き付けるように見つめ、しばらくすると部屋から出ていった。
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