騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
465 / 544

目を覚ますと

しおりを挟む


ライエルは、騎士の一人に北の辺境伯であるクレイドルのもとへ走らせた。野盗がいた事、住民に危害を加えたことで捕えた事。北の辺境に連行したい事。イズヴァンドの警備と見回りを強化したい旨、騎士の増員を要請した。ライエル達騎士は、北の辺境からの援軍が来るのをここで待つらしい。


「早く教会に戻ってレイラさんを休ませてあげてください」

「あぁ・・・すまんな、後は頼んだ」


短く返事をすると、レイバンはレイラを抱えたまま馬に跨がった。寝息をたてているレイラを起こさないように、馬をゆっくりと進ませる。安心したのか、緊張から解放されたからなのか、レイラはレイバンの腕のなかでぐっすりと眠っている。ゆっくりと馬を進めながら、レイバンは、レイラの寝顔をじっと見つめていた。教会までの道のり。ライエル達とも離れ、今は二人きりだ。それを思ったレイバンの腕に力が入る。離したくない。このままずっと腕の中に閉じ込めておきたい。ライエルにも他の男にも渡したくない。でも、レイラが望むなら。レイバンは、レイラの寝顔を見つめ、温もりを感じながら悶々としていた。


「・・・んっ・・・」


腕の中でレイラが身じろぎする。ゆっくりと瞼が開かれる様をレイバンは見逃すまいとじっと見つめていた。


「レイバン様・・・」

「起こしてしまったか?」

「いえ・・・あっ、すみません!私眠ってしまっていたのですよね!?」

「ん?あ、あぁ・・・」

「申し訳ありません・・・もう大丈夫ですから・・・っ!?」


レイラはその時はじめて気付いた。馬に乗せられている事。ずっとレイバンに支えられていた事を。驚いたレイラはバランスを崩して落馬しそうになる。


「おいっ!危ないだろう・・・」


咄嗟に力を込めたレイバンに抱き寄せられた。


「っ!?・・・う、馬になんて乗ったことなかったので驚いてしまって・・・」


馬に乗っていたことに驚いたのはもちろんであるが、それ以上にレイバンの支える腕が力強く驚く。だが、守られているようで嬉しくなる。心なしかレイバンの鼓動が早い気もするがそれは気のせいだろうと思うことにした。


「これから乗る機会も増えるだろう」


レイバンが言った言葉に、レイラは期待せざるをえなかった。レイバンがこれからも乗せてくれると言うのか。だが次の一言で期待してしまった自分に恥ずかしさを覚えた。


「騎士は大抵馬に乗るからな」


騎士。それは今のレイバンを指していない事をレイラは気付いてしまった。先程も自分をライエルに託そうとした。今朝は泣いていたのを慰められていた所を見られた。もしかしたら、話している内容は知らないにしても、その様子を見て、恋仲だと思っているのかもしれない。レイバンが言った言葉の続きは、これからライエルが乗せてくれるだろうからだったのかも知れない。レイラは、どこまでも自分はこの人に女として見てもらえていないのだと心に影を落としていた。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく妹と「お姉さんなんだから我慢しなさい!」が口癖の両親がお祖父様の逆鱗に触れ破滅しました

まほりろ
恋愛
【完結済み】 妹はいつも「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく。 誕生日プレゼントも、生誕祭のプレゼントも、お祖父様が外国に行ったときのお土産も、学園で首席合格しときに貰った万年筆も……全て妹に奪われた。 両親は妹ばかり可愛がり「お姉さんなんだから我慢しなさい!」「お前には妹への思いやりがないのか!」と言って私を叱る。 「もうすぐお姉様の十六歳の誕生日ね。成人のお祝いだから、みんな今までよりも高価な物をプレゼントして下さるはずよね? 私、新しい髪飾りとブローチとイヤリングとネックレスが欲しかったの!」 誕生日の一カ月前からこれでは、当日が思いやられます。 「ビアンカはお姉さんなんだから当然妹ののミアにプレゼントを譲るよな?」 「お姉さんなんだから、可愛い妹のミアのお願いを聞いてあげるわよね?」 両親は妹が私の物を奪っていくことを黙認している、いえ黙認どころか肯定していました。 私は妹に絶対に奪われないプレゼントを思いついた、贈った人も贈られた人も幸せになれる物。その上、妹と両親に一泡吹かせられる物、こんな素敵な贈り物他にはないわ! そうして迎えた誕生日当日、妹は私が頂いたプレゼントを見て地団駄を踏んで悔しがるのでした。 全8話、約14500文字、完結済み。 ※妹と両親はヒロインの敵です、祖父と幼馴染はヒロインの味方です。 ※妹ざまぁ・両親ざまぁ要素有り、ハッピーエンド。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 他サイトにも投稿してます。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/07/17、18時、HOTランキング1位、総合ランキング1位、恋愛ランキング1位に入りました。応援して下さった皆様ありがとうございます!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...