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期待と失意と
しおりを挟む慌ててレイバンの部屋から駆け出してきたレイラ。建物から出たところでとぼとぼと歩き始めた。もっと再会を喜びあいたかった。もっと昔のように近い距離で話せると思っていた。自分にとっては年上の兄のような存在。レイバンにとっては、自分はただ妹でしかないのだと打ちのめされたような気持ちだった。王都に長くいたレイバンは、美しく着飾った令嬢達を見て目が肥えている。そんな彼が、自分を見て恋情を抱くはずもないと何故気付かなかったのか。レイラは歩みを止めて空を見上げる。
「馬鹿ね・・・」
じわりと滲んだ涙が落ちないように上を向いた。必死に堪え、また一歩と歩み出す。神父と辺境伯であるクレイドルが話をしている応接間に戻った。
「失礼します」
部屋に入ってきたレイラに、神父とクレイドルが振り向く。
「ん?レイバンはどうした?」
「移動でお疲れのご様子でしたのでお部屋で休まれてます」
「疲れ?たったこれしきの事でか?つい先日まで王都で近衛騎士をしていたんだぞ?これではこれらかの領地の再建にも体力がもたんだろう」
レイラはもっともな言い訳だと思っていたが、クレイドルには勘付かれているようだった。
「お嬢さん、レイバンが失礼な態度でもとったようだな?」
「い、いえ、そのようなことは!」
「あいつはいろいろと拗らせているようだ。お嬢さん、焦らず長い目であいつと向き合ってやってくれ」
「私なんかが・・・」
レイラは先程考えていたことを頭の中で反芻していた。クレイドルも言ったように、レイバンはつい最近まで王都で近衛騎士をしていた。数多の貴族ましてや王族と関わっていたのだ。数多の着飾ったご令嬢を目にしてきたはず。自分なんかがレイバンの支えになれる気がしないし、惹かれる要素もないだろうと思える。向き合ったところで何になると言うのか。近しい兄的な存在だったレイバンが、随分と遠い存在のように感じた。レイラは、もうきっと、埋めようのないほど距離があると心を痛めていた。
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