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涙の再会
しおりを挟む少年に手を引かれて出てきたのは神父を務めているレイバンの実の祖父であった。
「神父様・・・」
神父は不安そうに見上げて話しかけてくる少年に優しい笑みを見せた。
「大丈夫だ。何の心配もない。彼は家族だ」
「家族?」
「そうだ。みんなも私の家族。彼も、レイバンも私の家族だ」
そう言うと、少年を小さな子ども達のところへ行きなさいと促した。神父はそれを見届けると、ゆっくりとレイバンのもとに歩み寄る。そしてそのまま・・・静かに抱き寄せた。
「レイバン・・・レイバン!」
神父はたまらず泣き崩れた。嗚咽を漏らしながら。そのいつもと違った様子が感じ取れたのか、教会から他の子ども達も何だろうかと覗き込むように出てきた。最後に出てきたのは、あのシスター、レイラだった。
「神父様?どうなされたのです!?」
「レイラっ!レイバンだ、レイバンが帰ってきたのだ!」
レイラははじめ、目の前の男が待ち焦がれていたレイバンだとは気付いていなかった。最後に見たのは10歳過ぎた頃だっただろうか。レイラはまだ5歳にも満たない少女だった。あれから20年近くもの時が過ぎている。
「レイバン様・・・」
「レイ、ラ?」
「はい、レイラです!レイバン様!ご無事で何よりでした!お会い・・・したかったですっ」
レイラの瞳から一筋の雫が落ちていく。
「レイラ・・・俺も会いたかった」
レイバンの言葉にレイラは目を丸くする。自分と同じ気持ちだったのかとつい勘違いしてしまいそうになるが、そうとは限らないと思い直した。家族だと、ずっと会えず会いたかったのだと言う意味だとしたら、とんだ勘違いである。期待してしまう心に必死に蓋をする。
「神父様、長い間留守してしまい、すみませんでした。陛下よりこちらを任されました。力を尽くして、この領地の復興と再生をしていくつもりです」
「そうか、そうか・・・私達もできるだの事はしよう。しかし・・・レイバン、よく戻ってきてくれた」
神父とシスターレイラは涙ながらにレイバンを歓迎した。その光景を少し離れたところから、クレイドルは微笑ましい表情で眺めていた。
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