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攻防と妥協
しおりを挟む朝になり、玄関ではいつしかのように攻防が始まってしまった。
「シア、一緒に行こう」
「レイバン様に会うのは出立される時でしょう?」
「別に一緒に行ったっていいじゃないか」
「会う時間に合わせて行けばいいんじゃいの?」
「どうせ同じ場所に行くんだ、一緒でいい」
「それまで私はどうすればいいのよ。ずっと待ってなければならなくなるわ」
「・・・一緒にいればいい」
「ウィル、どこに妻が同伴する騎士がいるって言うの」
「だったら、シアが行く時間まで屋敷にいる事にする」
「ウィル・・・騎士団の皆に迷惑がかかるわ」
「アイオロスがいる」
「・・・私は出かけるのに準備がいるわ」
「そのままでもいいんじゃないか?シアは着飾らなくても綺麗だ。むしろ、着飾ったら男達の目を引いてしまうからな」
「・・・あら、折角青いドレスを着て行こうと思ったのに」
レティシアのその言葉に、ウィルフレッドの表情が変わる。
「そうなのか!?じゃ、じゃぁ、着替え終わるまでここで待ってる」
「ここでじゃなくて騎士団で待ってて」
「いや、だめだ。綺麗なシアを一人で騎士団の中を歩かせるなんてできない」
「じゃあ、騎士団の入り口まで迎えにくればいいでしょう?」
「・・・むぅ・・・」
ウィルフレッドは、子どもと言ってもおかしくないほど拗ねた表情を見せる。
「じゃあ、行かないわ」
「じゃあ、俺も行かない」
「何言っているの」
「だって、シアはずっと屋敷にいるんだろう?俺も一緒にいたい」
レティシアは思った。もうこれは後には引けなくなっているに違いない。あぁいえばこう言う状態だ。
「ウィル、ちゃんと副騎士団長様を育て上げるんでしょう?こんなことしていては時間がかかっていつまでも騎士団長辞められないじゃない」
「・・・離れたくない」
もう、最終手段だ。
「わかったわ。王城には一緒に行くわ」
「本当か!?」
「ただし」
「?」
「私は陛下とお茶して待っているから、レイバン様達を見送る時間になったら呼びに来てくれるかしら」
「何故陛下の所にいる必要があるんだ。陛下だって男だぞ?いつどんな気を起こすかわからないんだ。危険だ!」
真剣な顔をして訴えかけてくるウィルフレッド。
「じゃあ、王城には行かず、北の辺境へ一人で行くわ。その間、ウィルは副騎士団長様の教育を進めておいてくれるかしら?」
「そんなのダメに決まっているだろう。わかった・・・陛下の所にいてくれ」
「わかったわ。着替えるから待ってて」
「あぁ、もちろん青いドレスだよな?」
「えぇ」
レティシアの返事に、なんとも言えない感情ではあったが、なんとか妥協点を見つけ納得したウィルフレッドだった。
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