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甘えるウィルフレッド

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レティシアになだめられ、優しくされ、キスをされ。少しずつ落ち着いてきたウィルフレッド。頃合いを見計らったようにノックする音がした。


コンコンコン


「失礼します」


メイド達が食事の準備をしていく。食事の用意が整うと、皆一礼をして部屋を後にした。


「公爵家のメイド達は気遣いまでできるのね」

「そうみたいだな」

「おいしそうよ、食べましょう?」

「・・・あぁ・・・」


力なく笑うウィルフレッド。レティシアは仕方がないなと言わんばかりの表情で、料理をフォークに刺すとウィルフレッドの口元へと運ぶ。


「はい、口開けて」

「・・・あーん」


大人しく口を開けるウィルフレッドを可愛いと思いながら、レティシアはせっせと料理を運び続けた。しばらくすると、その手を掴まれ、ウィルフレッドからフォークを取られてしまった。


「返して」

「次は俺の番だろう?」

「・・・わかったわ」


レティシアはうにっこりと笑うウィルフレッドを見て安堵しながら、大人しくされるがままになっていた。食事を終えた二人は、ソファで並んで寛いでいたが、ウィルフレッドが耐えきれずレティシアを抱きかかえた。ウィルフレッドはレティシアを膝に乗せると、肩に頭を預け動かなくなった。眠たいのか。いや、考え事をしているようだった。


「ウィル?何考えているの?」

「ん?」


レティシアから声をかけられ、ウィルフレッドはゆっくりを頭を上げる。目があったウィルフレッドは、ふわりと笑い、レティシアを抱きしめ直した。


「俺の妻がシアでよかった・・・」


ウィルフレッドの心底安堵するような声で、つぶやいた言葉をレティシアは静かに聞いていた。


「シア・・・俺を選んでくれてありがとう。俺と一緒にいてくれて・・・ありがとう」

「こちらこそ。愛してくれてありがとう」


ウィルフレッドは、レティシアを抱えたまま立ち上がる。


「どこ行くの?」

「バスルーム」

「そう・・・」


ウィルフレッドがゆっくりと歩き出す。夜の閨はまだでも、こうやって肌の触れ合いはする。だから、きっかけさえあれば・・・ウィルフレッドの中のわだかまりがなくなれば、その先はおのずとやってくるだろう。そのきっかけとなる事はなんなのか。今の二人にはまだわからない。だが、お互いを手放すことだけは考えてもいない。バスルームでゆっくりと湯に浸かり、存在を確かめるように抱きしめ、髪に触れるウィルフレッドにくすぐったさを感じていたが、今は好きにさせておこうとレティシアは身を委ねていた。



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