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したいのか
しおりを挟む帰ってくるなり焦った表情で迫り、泣き出してしまったウィルフレッド。王城に出仕していた間に、何があったのか。レティシアはウィルフレッドの背中を優しくトントンと叩く。
「落ち着いた?」
「・・・あぁ」
少し落ち着いてきた様子のウィルフレッド。レティシアはメイドを呼び、夕食はこちらの部屋に準備するように言いつけた。
「何があったの?」
「・・・」
落ち着いたウィルフレッドをソファに座らせ、自身も隣に座り、手を取った。
「ウィル?」
「・・・俺達は夫婦・・・だよな?」
「えぇ、そうよ」
「・・・怖いんだ」
「何が?」
レティシアはつとめて優しい声で聞き返す。
「・・・シアは・・・」
ウィルフレッドがじっと見つめてくる。レティシアは次の言葉を待つ。
「・・・したいのか?」
「何を?」
「・・・その・・・夜の事だ」
「・・・したいかどうかと聞かれたら、その返事はわからない・・・だわ」
「・・・」
「だって、した事ないんだもの。いいか悪いかもわからないでしょう?」
「・・・してみたいと思うのか?」
「どうかしら。してみたいと思ったとしても、その相手はウィルだけだわ」
「・・・本当か?」
「えぇ、ウィル以外に誰がいるというの?他の男とそんな事するなんて、考えられないわ」
「・・・そうか・・・」
ウィルフレッドは、ホッとしたように、深く息を吐く。
「ウィル、何があったのか知らないけど、焦らなくていいと思うわ」
「・・・焦る・・・か」
「結婚式の夜に閨を行うのはこの国の習慣かもしれない。でも、別に急ぐことないと思うわ。こうやって二人の時間がとれるのも今だけよ?子どもがいたら、こうはいかない。互いだけを見ている事なんてできないもの」
レティシアの優しい声に、言葉に、ウィルフレッドの心は解きほぐされていく。
「そう、だな」
ウィルフレッドは、レティシアの瞳をじっと見つめる。
「・・・俺はどうすればいい?・・・」
レティシアは気付いた。心が追いつかない。そんな表現が似合っているかの様子だ。
「ねぇ、ウィル・・・私はね、公爵家の為には、そういう行為も必要だと思うわ。でもね、夫婦としては、焦る必要はないと思う。教えてあげるわ。私は、ウィルしかいらない。ウィルだけを愛しているの」
レティシアはウィルフレッドの首に腕を回し、啄むようなキスを繰り返した。ウィルフレッドもそれに応えるように、レティシアの腰に腕を回し静かに受け入れていた。
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