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切り開いていく
しおりを挟むクラウディアと話をした事で、レティシアの中で霞がかっていたものが晴れていくような気がしていた。何とはまだハッキリとは言えないが、ウィルフレッドが前に進めずにいる理由がなんとなくわかってきた気がした。それとなく話してみても、そういう雰囲気に持って行っても結局はダメなのだろうと理解した。だとすれば、これまでの声がけは逆効果だっただろう。
「お義母様、なんだか少しだけ答えがわかった気がしますわ」
「そう?何か役に立てたのならよかったわ」
「きっとウィルは最初に戻る必要があるようです」
「最初?」
「はい、全て初めから、さもこれまでがなかったかのように、これからが初めてのように」
「記憶喪失にでもなるつもり?」
「ふふっ、さすがにこれまでの事を全てなかった事にはできませんし、私にとっても素敵な想い出は沢山ありますの。ですから、記憶を無くすというのはありえません。そう、これから起きることが、やり直しではなく、これが本当の未来だったのだと思わせれば良いのだと思います」
「これからが本当の未来・・・確かに、それだったら、これまでが今この瞬間の為にあったのだと思えるようになるかもしれないわね」
クラウディアは感心するように、レティシアの言葉を繰り返し、そして、うちの娘は慈悲深く頭が良いのだと改めて感心する。
「レティシアちゃん、並大抵の事ではそうはならないわ。何か秘策でもあるのかしら?」
「・・・今のところはぼんやりとしています。でも、きっと、そう遠くない未来、新たな道が開けますわ」
レティシアはにっこりと微笑むと、言葉を続けていく。
「お義母様、ウィルはいずれお義父様の跡を継いで公爵となります。敷かれたレールを走っていくだけの安全な道が準備はされています。ですが、それだけが全てではなと思います。自分で道を切り開くのも悪くないと思いませんか?」
「道を切り開くって・・・騎士団長としての仕事をまだ続けるように言うつもりなの?」
「いえ、騎士団長はウィル自身が辞めたがっていますし、人の命をあずかる仕事です。責任感と人望と、力があったとしても、衰えには勝てませんわ。若い力を伸ばしていくのも大事。いつまでも居座り続けるのが正解ではありませんもの。ですから、騎士団長の座は、次に明け渡すべきだと考えています。ウィル自身も、そのつもりで動き始めています。前にお話ししていましたよね?恋の話」
「もしかして、後継者である騎士の方に関係しているの?」
「えぇ、実は・・・」
そのあと、レティシアは先日の夜会で発表された、副騎士団長に昇格したアイオロスとミリアの出会いと恋の話をした。クラウディアも、楽しそうに話に聞き入り、随分と詳しく話をしていた。
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