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初めて知る事実に
しおりを挟む「陛下、ソハナスの動きはしっかりと見ておかないといけないと思っています」
ウィルフレッドは国王を真剣な瞳で見つめると、そう力強く言った。
「そうだな。向こうがレティシア夫人に気付くとなれば大変な事になるやもしれん。母の姿そのものだと言うのならば尚のことだ」
「はい、ですのでシアの存在だけは向こうに気付かれるわけにはいきません」
「しかしそうなると、やはりエルサの事も心配だ」
国王レオナルドは、唯一の姪で、北の辺境伯の娘であるエルサの事を思い出し不安そうな表情を見せる。
「陛下、その為にもコルテオとマクシミリオンを辺境へやるのです。守りを固める為にも」
話を聞いていた中、第一王子ヴィンセントだけが内容を掴めずにいた。レティシアがエルサがと話しているが、誰かに取られそうだという話をしているだけなのか、それとも狙われているような事があるのか。ヴィンセントが口を開く。
「ウィルフレッド、すまないが、なぜ二人が危険だと言うような話をしているんだ?誰かに取られそうなのか?」
「殿下、半分はそうですが、半分は不正解です」
「どういうことだ」
「シアは・・・ベルモンド姉妹は、ソハナスの王女であったレイリア王女殿下と東のベルモンド辺境伯との間の子であります」
「なんだと!?」
「兄上、私も少し前に知ったばかりで、ウィルフレッドでさえも十日の休暇の間に知った事なのだそうです」
「・・・そう、なのか」
「はい。ヴィンセント殿下、ソハナスの国王が先王の首をとり成り上がったのはご存知ですね?」
「あぁ」
「その際に無理矢理娶られそうになった王女が、命からがら逃げ出して東の辺境へと辿り着いたのです」
「しかし東のベルモンドにソハナスの王女が嫁いだなんて話聞いたことがない!」
「えぇ、俺も最近知ったばかりです。この結婚は公表されず、誰も知らないものなのです」
「では危ないと言うのは・・・」
「向こうの国王は、逃げ出した王女に懸想していました。今でも面影を探すように若い娘を王城へと召し上げているそうです。王女殿下に瓜二つのシアがいるとなればきっと欲しがります」
ウィルフレッドは心配そうにレティシアを見つめる。そしてヴィンセントはウィルフレッドの話に驚愕した。知らない事ばかり、理解をするのがやっとだった。黙り込んだヴィンセントを横目に国王が視線を動かす。
「だが、エルサはやっぱり王都に来た方が安全ではないのか?」
しばらく静かにしていた国王が口を挟んだ。すかさずアルバートが答える。
「エルサ嬢に嫌われても知りませんよ?」
「・・・うっ・・・」
仕方がない人だと言わんばかりの表情で、アルバートとウィルフレッドは見ていたが、ヴィンセントだけは名を付けられぬ感情を抱いていた。
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