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日常と初めての
しおりを挟む誰でもいいわけではない。ミリアでないといけないと言ったアイオロスの言葉に、ミリアは心があたたかくなり、宙にでも浮いているのかと錯覚しそうになる。いや、錯覚ではなかった。実際浮いたのだ。そしてある場所に着地する。
「ミリィ、愛してます」
首元に擦り寄るアイオロス。ミリアは、アイオロスに抱き上げられ、膝に乗せられていた。何の前触れもなく、目の前で行われていたお膝に乗せて愛でるが、今自分に対して行われているのだ。突然のことで、ミリアは固まってしまった。だが、次第に冷静になってくる。
「・・・随分と慣れてらっしゃるのですね」
「何にですか?」
ミリアの拗ねているような声にアイオロスは伺うように覗き込む。
「あまりにも自然でしたので、驚いています」
「・・・ミリィはこれはあまり好きではありませんでしたか?」
「・・・好きとか嫌いとかではなくて・・・誰かにした事があったのかと思ってしまっただけですわ」
「こんな事するのは始めてです。したいと思ってしまうほどミリィが可愛いし、愛しているんです。もっともっと触れていたい・・・」
アイオロスは懇願するようにミリアを覗き込む。
「もしかしてミリア嫉妬しているの?」
向かいで見ていたレティシアがすかさず切り込む。
「・・・嫉妬・・・?え、そんなんじゃないわ!」
「ミリィ、嫉妬?嫉妬してくれてるんですか?う、嬉しいっ!ミリィが俺に嫉妬してくれているなんて!!」
「だから、違うから!」
「違わないわよ。他の女性と触れ合った事があるのかもとか、慣れているということは、経験があるのかとか思ってしまうのは立派な嫉妬だわ」
「ち、違うからぁ・・・」
ミリアは顔を真っ赤に染め、両手で隠して俯いてしまう。
「ミリィ・・・なんて可愛いんですか・・・」
アイオロスは満面の笑みでミリアを見ている。
「可愛い顔が見えません」
「み、見なくていいです!」
「嫌です」
「っ!?」
アイオロスはミリアの両手を掴み顔から外す。
「顔が真っ赤ですね」
「だから見なくていいって言っているのに!」
「あぁ・・・可愛い・・・」
ウィルフレッドもレティシアも、向かいでこの様子を見ていて同じ感想を持った。あぁ、懐かない猫がシャーシャー言っているみたいだ。ウィルフレッドとレティシアにとっては日常で、アイオロスにとっては初めての体験と喜び、ミリアにとっては初めての体験と羞恥。さまざまな事が交錯する中で、アイオロスとミリアの関係は少しずつ変化をしていく。ミリアが自信を持ってアイオロスの愛を正面から受け止めれるようになるのはいつになるのか。それはまだ先のお話。
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