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目覚めたらそこに

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「・・・ん・・・」


まどろみの中、ミリアはゆっくりと瞼を開ける。左手があたたかくゴツゴツしたものに包まれているのが感覚でわかる。一体何が?はっきりとしない意識の中、ゆっくりと首を傾けると、視界に黒が映る。全体が掴めないまま、少しずつ意識が覚醒しはじめると、それは人の頭だという事に気がついた。自身が知る中で黒髪は副騎士団長となったアイオロスのみ。まさかアイオロスが?そのまさかだった。ミリアの手を握ったまま、床に膝をついた体勢で始めはミリアの寝顔をじっと見ていたが、気付かぬ内に眠ってしまったらしい。


「・・・っ・・・」


理解してしまえば驚きを超えて緊張し始める。まさか好きな人が自身の手を握って、寝かせられているソファに縋り付くように眠り、すぐ側には顔がある。まつ毛長いな・・・などとじっくり観察していると、急にぱちっと目が開いた。


「ミリア嬢!」


アイオロスはガバッと起き上がると、繋いでいたミリアの手を取って自身の頬に当てる。


「ふ、副騎士団長様!?」


アイオロスの行動に驚いたミリア。自身の手に頬擦りするアイオロスはどこをどう見ても甘えているようにしか見えない。


「・・・すみません。でも、もう我慢ができなくて・・・」

「が、我慢・・・ですか?」

「はい、叶わぬ恋と、望んではいけない相手だと気持ちに蓋をしてきました。ずっと好きだったんです。心の中にはいつもあなたがいて・・・追い出しても追い出しても心にすっと入ってくるんです。ミリア嬢・・・俺はあなたが好きです。世界一・・・いや、唯一です。先程の返事・・・聞かせて貰えませんか?」


アイオロスは意を決してミリアに返事をと促した。婿としては不足だと言われるのなら、どれだけでも努力する。プロポーズの言葉が足りないというのなら、何度でも好きと伝える。もっとロマンチックにと言われるのなら、不本意だが周りに教えを乞うてでもミリアを喜ばせたい。もし勘違いだと言われるのなら・・・好きになってもらえるよう努力は惜しまない。アイオロスはミリアの返答をじっと待つ。聞き逃さないよう、じっと静かに。


「副騎士団長様・・・いえ、アイオロス様」


途端、アイオロスの表情がパァッと明るくなる。はじめて名で呼ばれた。それがどれだけ嬉しかったか、待ち望んでいたか。妄想だけの呼びかけではない。本当に、今、目の前で・・・ミリアが名を呼んでいる。その嬉しさを噛み締めて、ゆっくりと返事をする。


「はい・・・なんでしょう」


アイオロスはこれでもかというくらい表情が緩み切っていた。


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