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ミリアside親友の誘うままに
しおりを挟む「ねぇ、レティシア、これはどこに向かってるの?」
近衛騎士団の詰所の中を勝手知ったる様子でぐんぐん進んでいくレティシア。着いてきてと言われ、どこへ行くのかも知らされないまま、ミリアは後を追っていた。
「ここって・・・執務室?」
「しっ・・・」
レティシアは口に人差し指を当て、静かにと言う。
「ま、待ってください!」
室内から急に焦ったような声がする。この声は聞き間違えるはずがない、アイオロスの声。一体何が起きているのか。静かに聞き入る。レティシアがドアをそっと少しだけ開けると声がより鮮明に聞こえてくるようになった。
「あ、えっと・・・その・・・俺は結婚など考えておりません」
「・・・えっ?」
ミリアは唖然とした。結婚などしない。その事にもだが、今ここで、アイオロスに縁談を持ちかけているかのような話だ。脈が速くなる。アイオロスが他の誰かのものになってしまう。はっ、はっ、と浅い呼吸を繰り返していた。
「・・・それはどうしてだね。一生剣と生きていくとでも言いたいのかね?」
「そういうわけでは・・・ないのですが・・・」
「随分と歯切れが悪いね。アイオロス、何か言いたいことがあるのかい?」
アイオロスは何を言い渋っているのだろう。聞きたい、知りたい。でも知りたくない。第二王子のアルバートと目があった気がして慌ててレティシアを見るが、大丈夫と言わんばかりに笑顔で頷いている。
「・・・お慕いしている方がいるのです」
終わった・・・
ミリアは、アイオロスに好きな相手がいるのだと知ってしまった。
「ですが、俺が望んでいい方ではないので、叶わぬのならと一生騎士として生きていくとそれだけを思っております」
その女性ではないといけないと言っているのだと言うことがわかる。そんなふうに想われたかった。たった一人の愛する人になりたかった。もう叶わないのだと、現実を突きつけられたようで、ミリアは表情が抜け落ち、愕然とした。尚もまた話は続いていく。
「殿下直々の縁談だ。まずは相手の事を知ってからでもいいのではないのか?」
「相手は誰であっても変わりません。俺は・・・好きな人がいるんです。その方でなければ、結婚など考えたくないのです」
ダメ・・・
ダメよ・・・
泣いてはダメ・・・でも、無理・・・
「誰か・・・いらっしゃるのですか?」
とうとうアイオロスに気付かれてしまったようだった。ミリアは耐えきれずレティシアに縋り顔を隠す。それでも涙は止まらずとうとうしゃくり上げるようにして泣き始めてしまった。レティシアが背をトントンと優しく叩いて落ち着かせようとしてくれる。
「団長夫人・・・えっと・・・」
とうとうアイオロスに見られてしまった。幻滅されたかもしれない。勝手に盗み聞きして、勝手に落ち込んで泣き腫らして。
「アイオロス君、娘との縁談がそんなに嫌だったかね?」
私との縁談・・・!?
ちょっと待って、聞いてないわ!
お父様、何を勝手にっ!
「君があまりにも拒否するもんだから、ミリアが泣いてしまったなぁ」
拒否・・・
そうよね・・・
副騎士団長様には好きな方がいる
その方ではないと結婚など考えないと・・・
こんな無理矢理縁談なんか押し付けて・・・
きっと嫌われるわ
「っ!?・・・ミリア嬢・・・が・・・縁談相手!?」
えっ・・・
どういう事?
私と知って拒否をしていたのではないの?
どうしてそんなに驚いて・・・
この時はこの後赤面する事態になるなんて・・・わかるわけないじゃない
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