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宰相の焦りと期待
しおりを挟む「アイオロスは随分とご執心な女性がいるみたいだね」
「えぇ、そうみたいですが中々口をわりません。まぁ俺には態度でバレバレなんですが」
「そうなのか?」
騎士団長の執務室のソファに向かい合って座り、アルバートとウィルフレッドが話をしている。ウィルフレッドはレティシアに頼まれて仕切りにミリアの名を出している為、アイオロスの態度で確信を持っているのだ。
コンコンコン
「どうぞ」
「失礼します」
執務室へと来たのは宰相だった。
「アルバート殿下もご一緒でしたか。それで・・・未来の婿殿はどのような様子なんでしょう?」
「宰相、ソワソワして、気になっている様子だね?」
「もちろんですよ。もし話が進められるようなら早く囲ってしまわないと、他に取られでもしたら、娘は一生結婚しないなどと言い出すかもしれませんから」
「ククッ、随分と必死だ」
「殿下、私にとっては笑い事ではないのです。伯爵家の存続がかかっている重要な事なのですよ!」
「娘の事が心配なだけだろう?」
「ぐっ、そ、それもありますが」
「素直になりなよ、宰相。まぁ、いい。じゃあ、僕から言おうか。宰相、アイオロスには随分とご執心な女性がいる。それが誰かはわからない」
「わからない・・・」
「稽古中も、警護中も誰かを探すようにソワソワしている。そこから導くに、騎士団や王宮に出入りしている女性のようだ。だが、その様子が見られるようになったのは、つい数日前の事だ。そうだね・・・アイオロスに縁談をと話を切り出した後かな?」
アルバートはウィルフレッドの顔を見る。
「そうですね、その辺りから落ち着きがなくなりましたね」
「ウィルフレッドの視点からは何か違うものが見えているんだろう?」
アルバートはにやりとウィルフレッドを見る。
「まだ何も言えませんが。宰相殿、決して慌てないでください。今のアイオロスは副騎士団長という肩書きがつき、周りからの扱いが変わり、心身共に揺らいでいる状況です。今、無理に事を進めようとすれば怖気付くかもしれません。なので期を見計らっている所です。宰相、婿殿を勝ち取りたいなら、今は見守って頂けると」
ウィルフレッドは眉を下げ、すみませんと軽く会釈した。
「そう、ですか・・・ですが、一つ確認させて頂きたい」
「何でしょう?」
「ミリアが悲しむ事は・・・」
「タイミングさえ間違わなければきっと笑顔が見られますよ」
宰相はそれを聞いてホッとした。そして、ニコニコと執務室を後にしていった。
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