371 / 543
好きだけど
しおりを挟む【ミリアside】
「お嬢様、随分とご機嫌ですね?何かいい事がございましたか?」
伯爵家の屋敷に戻ってきたミリアに、側付きのメイドのシェリーが訪ねた。
「わかる?お慕いしている方とお話ができたの!しかもまたって言ってくださったの!」
「それはようございましたね」
「はぁ・・・」
「どうなさいました?」
「彼が婚約者候補だったらいいのにって」
「旦那様におっしゃってみてはいかがなのです?」
「だ、ダメよ!だって、彼は・・・平民出身で受け継ぐ爵位もないの。だからきっとお父様も許しては下さらないわ。お父様はその身を国に捧げて忠誠を誓う方よ?今は私の我儘を聞いてくださるけれど、いずれかは家の為、国の為にと政略結婚の駒になる事は覚悟しているの。だからね・・・今だけは我儘言って彼との結婚に夢を見ていたいの」
「そうですか・・・」
シェリーは残念そうに返事をした。ミリアは好きな殿方の事はよく話すが、この気安く会話をする間柄のメイドのシェリーにもそれが誰なのかは言わない。それが誰なのかを知っているのはレティシアだけ。そしてついさっきウィルスレッドに聞かされた第二王子のアルバートと宰相のみである。ただミリアは知らない。宰相が娘を政治の駒に使おうとは1ミリも思っていない事。娘の幸せを考え相手を探しては薦めるを繰り返していただけ。宰相にとっては娘婿は、真面目で誠実であれば誰だっていい。それが例え平民であろうが、娘を大事にさえしてくれる男であればいいのだ。この親子は互いに互いの考えを知らなさすぎる。宰相もその気持ちを言えば。そして娘ミリアも自分の希望を、想い人を言いさえすれば万事解決といく。だがまだ、そう簡単にはいかなさそうである。
【アイオロスside】
アイオロスは奥庭での余韻に浸りながら騎士団の稽古場へと足を伸ばしていた。
「隊長!」
「隊長、聞きましたよ!」
「誇りに思います!」
騎士達が詰め寄ってきては賛辞を送る。自分が縁談をすすめられて悩んでいる間に、ウィルフレッドによって、アイオロスが第一隊隊長から副騎士団長へ昇格となった事が伝えられていた。
「あ、あぁ、ありがとう」
「俺達の希望の星ですよ!」
「そうです、平民出身で副騎士団長にまでなるなんて!」
騎士達がわぁわぁと周りで騒いでいるが、アイオロスはそんな気分にはなれなかった。奥庭でのミリアとの距離、笑顔、そして立ち去る後ろ姿。それをどんなに捕まえてしまいたいと思った事か。そしてアルバートから勧められる縁談をどう断ればいいか。そればかりを考えていた。
1
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる