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好きだけど
しおりを挟む【ミリアside】
「お嬢様、随分とご機嫌ですね?何かいい事がございましたか?」
伯爵家の屋敷に戻ってきたミリアに、側付きのメイドのシェリーが訪ねた。
「わかる?お慕いしている方とお話ができたの!しかもまたって言ってくださったの!」
「それはようございましたね」
「はぁ・・・」
「どうなさいました?」
「彼が婚約者候補だったらいいのにって」
「旦那様におっしゃってみてはいかがなのです?」
「だ、ダメよ!だって、彼は・・・平民出身で受け継ぐ爵位もないの。だからきっとお父様も許しては下さらないわ。お父様はその身を国に捧げて忠誠を誓う方よ?今は私の我儘を聞いてくださるけれど、いずれかは家の為、国の為にと政略結婚の駒になる事は覚悟しているの。だからね・・・今だけは我儘言って彼との結婚に夢を見ていたいの」
「そうですか・・・」
シェリーは残念そうに返事をした。ミリアは好きな殿方の事はよく話すが、この気安く会話をする間柄のメイドのシェリーにもそれが誰なのかは言わない。それが誰なのかを知っているのはレティシアだけ。そしてついさっきウィルスレッドに聞かされた第二王子のアルバートと宰相のみである。ただミリアは知らない。宰相が娘を政治の駒に使おうとは1ミリも思っていない事。娘の幸せを考え相手を探しては薦めるを繰り返していただけ。宰相にとっては娘婿は、真面目で誠実であれば誰だっていい。それが例え平民であろうが、娘を大事にさえしてくれる男であればいいのだ。この親子は互いに互いの考えを知らなさすぎる。宰相もその気持ちを言えば。そして娘ミリアも自分の希望を、想い人を言いさえすれば万事解決といく。だがまだ、そう簡単にはいかなさそうである。
【アイオロスside】
アイオロスは奥庭での余韻に浸りながら騎士団の稽古場へと足を伸ばしていた。
「隊長!」
「隊長、聞きましたよ!」
「誇りに思います!」
騎士達が詰め寄ってきては賛辞を送る。自分が縁談をすすめられて悩んでいる間に、ウィルフレッドによって、アイオロスが第一隊隊長から副騎士団長へ昇格となった事が伝えられていた。
「あ、あぁ、ありがとう」
「俺達の希望の星ですよ!」
「そうです、平民出身で副騎士団長にまでなるなんて!」
騎士達がわぁわぁと周りで騒いでいるが、アイオロスはそんな気分にはなれなかった。奥庭でのミリアとの距離、笑顔、そして立ち去る後ろ姿。それをどんなに捕まえてしまいたいと思った事か。そしてアルバートから勧められる縁談をどう断ればいいか。そればかりを考えていた。
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