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アイオロスへの縁談
しおりを挟むアルバートとウィルフレッドに執務室に呼ばれ、報告をしようとして止められたアイオロス。ウィルフレッドからの質問は意外なものだった。
「なぁ、アイオロス。前に、恋をしている女性がいるんだと言っていたのを聞いたことがある。それはまだ変わっていないか?」
「えっ!?は!?・・・な、何故そのような事を、今・・・」
「お前の今後に大いに関わるからだ。どうなんだ?」
「・・・ずっと忘れられずにおります」
「・・・そうか・・・誰なのか聞いてもいいか?」
ウィルフレッドの言葉にアイオロスは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに口を開いた。
「・・・その女は・・・俺が想いを寄せてはならない方なんです」
「どうしてだ?人妻もしくは誰かの婚約者なのか?」
「そういうわけでは・・・婚約者がいらっしゃるかどうかは存じ上げていません」
少々暗い表情を覗かせたアイオロスを見て、アルバートが切り出した。
「アイオロス、実は君に縁談が持ち上がっているんだ」
「お、俺に!?・・・ですか?」
「あぁ、お前に意中の相手がいなければ先方は、特に親は是非にと言っている。君が平民出身だと知っているし、真面目で誠実でといたく気に入ってる様子なんだ」
よかったじゃないかと言いたげなアルバートの表情を見て、アイオロスは焦っていた。第二王子であるアルバートからの縁談など断る事などできない。だが自分には想っている女性がいる。しかしその相手は望んでいい相手ではない。その葛藤がアイオロスを苦しめた。
「君がその女性に気持ちを伝えるつもりがないのなら、この縁談受けてみてもいいと思うんだ。君にとってはとてもいい縁談だと思う」
アルバートの言葉にアイオロスはどう返事をするのがいいのかわからなかった。身分差があり、想い人と添い遂げる事ができないのなら一生騎士としてただ毎日を過ごしていくつもりだった。
「少し・・・考えさせてください」
アイオロスはそれだけ言い残し、執務室を後にした。
「殿下、随分と押しつけるような話をなさいましたね」
「別に押しつけるつもりはなかったよ?でも、ああでも言わないと、誰を想っていて、どうしたくて何で悩んでいるのか、彼は一生言わないつもりだよね?だったら困らせればいい、焦らせればいいんだ。もしそれで失敗したとして、相手に少しでも気持ちがない事がわかれば、いつまで想っていても、いずれこうなる事だったと諦めもつく。僕だってあの夜会でマリーリアに断られる事を前提で観衆の前に出たんだ。こうでもしないとリアに見てもらえなくて・・・卑怯な手だったかもしれない。でも、実らなくても、気持ちはしっかりと伝えたかったからね」
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