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騎士の覚悟と戸惑い
しおりを挟む「失礼します」
アルバートとウィルフレッドから呼ばれたアイオロスが執務室へとやってきた。今日からウィルフレッドが仕事に復帰する。休暇の間の状況報告を頭の中でまとめながらこの部屋にやってきた。まさかそれが全て無になろうとはこの時は思ってもいなかった。
「アイオロス。不在の間、迷惑をかけたな」
「迷惑だなんて。私はただただ団長の教えを元に職務を全うしただけです。指揮やら管理は全てアルバート殿下が行ってくださっておりましたので」
「謙遜しなくていいよアイオロス。確かに僕は書類仕事や管理は行った。これも辺境へ行った時に役に立つななんて思いながらね。予行練習みたいなものさ。だが・・・騎士達の統率はしっかりと取れている。これはこれまでのウィルフレッドが行ってきた結果であり、その意思を引き継いでいる者だからこそできる事だ。アイオロス、君はちゃんとこなせている」
「勿体無いお言葉です」
アイオロスは深くお辞儀をすると、しっかりと二人を見た。
「それで、この十日間ですが」
アイオロスが報告を始めようとした時、ウィルフレッドが言葉を遮った。
「まぁ、待て。それは後できちんと聞く。まずはこれからの事だ」
「えっ・・・あ、はい」
「アイオロス。レイバンの件では不安に思っていると思う。お前はレイバンの直轄の部下でもあり、随分と慕っていたのを知っている。だからこそ、それに気付けなかった事、止めることができなかった己に怒りを覚えているだろう?」
「・・・団長はお見通しなのですね」
「それは俺もだからだ」
「俺は・・・俺が気付けば、陛下を危ない目に合わせることはなかったのです。毎日のように一緒にいて、常に副騎士団長の背を追うように学んでいました・・・俺は・・・騎士、失格です」
話しながら段々と言葉に力がなくなっていくアイオロス。次第に視線も下へと向いてしまった。
「・・・俺は、近衛には向いていません。ですから」
「その先は聞けないな」
「ですが!」
「そうだよ?アイオロス。言おうとしている事は僕にもわかる。でもね、ここから先の話は僕達は聞き入れられない」
アルバートの言葉に心のぶつけ先を失ったアイオロスは困惑した表情でいる。
「なぁ、アイオロス。前に、恋をしている女性がいるんだと言っていたのを聞いたことがある。それはまだ変わっていないか?」
「えっ!?は!?・・・な、何故そのような事を、今・・・」
「お前の今後に大いに関わるからだ。どうなんだ?」
「・・・ずっと忘れられずにおります」
「・・・そうか・・・誰なのか聞いてもいいか?」
ウィルフレッドの言葉にアイオロスは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに口を開いた。
「・・・その女は・・・」
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