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もしかしたら妹だった
しおりを挟むマリーリアとレティシアがソハナスの元王女であったレイリアの娘であるという事を知ったアルバート。国王の自身の恋情故に、軽い気持ちで断った縁談がもたらした悲劇。
「東のベルモンドのギルベルトは、辺境を守る役目もある上、王都からは距離があると、夜会などには滅多なことでは出てこなかった。重要とされる式典ぐらいのものだっただろう。だから奥方も、婚約者もいなかった。当時、北の辺境で騎士をしていたクレイドルから後に報告を受けた時は驚いたものだ。最初は私との婚姻を諦めきれず横暴に出て大変な目にあったのかと思った。だが、その報告内容で考えを変えざるを得なかった。北の辺境に現れた王女は、随分とボロボロでやつれていたと。詳しい話を聞くまでは、誰も王女だとは思わなかったらしい」
国王の話を聞き入るように耳を傾けていた二人。
「父上、この事は兄上には?」
「ヴィンセントも知らぬ事だ」
「次期国王なのです、お話ししたほうがよいのでは」
「あれは思い込みや感情が激しすぎる。アルバート、お前のように冷静さはない。だからあえて話はしないつもりだ」
「そうですか・・・承知しました」
そして一時の間を開け、国王が続ける。
「ギルベルトと王女が恋仲になるのにはそう時間は掛からなかった。東の辺境に送られた王女は、最初は随分と警戒していたようだが、ギルベルトは良くも悪くも嘘はつかないし、人を裏切る事だけはしない。その誠実さ故、損をする事だってあった。だが、その性根が真っ直ぐなところに、レイリア王女が惹かれていったのだろう。歩み寄ったのは王女のほうからだったと聞く」
「そうなのですか。でも、それがあったからこそ、レティシア夫人がいて、マリーリアもいる。唯一の愛しい相手に出会えたのですから」
「そうですね。もし陛下がレイリア王女と婚姻なだれされていたら、シアはいませんでした。そしてマリーリア嬢も。もしかするとアルバート殿下はマリーリア嬢と兄妹だったかもしれません」
「それは困るなぁ。幼い間はお兄様と慕ってくれるだろうが、大人になれば他の男に取られてしまう。そんなの耐えれそうにないよ」
苦笑いするアルバートを横目に、ウィルフレッドは国王へと向き直る。
「過去はどうであれ、今が大事なのです。唯一を手に入れた今、それをみすみす手放す事などできません。ソハナスの件、少し策を練ってみようと思います」
「そうか。うむ、よかろう。アルバートよ、お前も一緒に行動しろ」
「はい、仰せつかりました」
ウィルフレッドとアルバートは二人で国王の私室から出ると近衛騎士団の執務室へと向かった。
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