上 下
360 / 543

もしかしたら妹だった

しおりを挟む


マリーリアとレティシアがソハナスの元王女であったレイリアの娘であるという事を知ったアルバート。国王の自身の恋情故に、軽い気持ちで断った縁談がもたらした悲劇。


「東のベルモンドのギルベルトは、辺境を守る役目もある上、王都からは距離があると、夜会などには滅多なことでは出てこなかった。重要とされる式典ぐらいのものだっただろう。だから奥方も、婚約者もいなかった。当時、北の辺境で騎士をしていたクレイドルから後に報告を受けた時は驚いたものだ。最初は私との婚姻を諦めきれず横暴に出て大変な目にあったのかと思った。だが、その報告内容で考えを変えざるを得なかった。北の辺境に現れた王女は、随分とボロボロでやつれていたと。詳しい話を聞くまでは、誰も王女だとは思わなかったらしい」


国王の話を聞き入るように耳を傾けていた二人。


「父上、この事は兄上には?」

「ヴィンセントも知らぬ事だ」

「次期国王なのです、お話ししたほうがよいのでは」

「あれは思い込みや感情が激しすぎる。アルバート、お前のように冷静さはない。だからあえて話はしないつもりだ」

「そうですか・・・承知しました」


そして一時の間を開け、国王が続ける。


「ギルベルトと王女が恋仲になるのにはそう時間は掛からなかった。東の辺境に送られた王女は、最初は随分と警戒していたようだが、ギルベルトは良くも悪くも嘘はつかないし、人を裏切る事だけはしない。その誠実さ故、損をする事だってあった。だが、その性根が真っ直ぐなところに、レイリア王女が惹かれていったのだろう。歩み寄ったのは王女のほうからだったと聞く」

「そうなのですか。でも、それがあったからこそ、レティシア夫人がいて、マリーリアもいる。唯一の愛しい相手に出会えたのですから」

「そうですね。もし陛下がレイリア王女と婚姻なだれされていたら、シアはいませんでした。そしてマリーリア嬢も。もしかするとアルバート殿下はマリーリア嬢と兄妹だったかもしれません」

「それは困るなぁ。幼い間はお兄様と慕ってくれるだろうが、大人になれば他の男に取られてしまう。そんなの耐えれそうにないよ」


苦笑いするアルバートを横目に、ウィルフレッドは国王へと向き直る。


「過去はどうであれ、今が大事なのです。唯一を手に入れた今、それをみすみす手放す事などできません。ソハナスの件、少し策を練ってみようと思います」

「そうか。うむ、よかろう。アルバートよ、お前も一緒に行動しろ」

「はい、仰せつかりました」


ウィルフレッドとアルバートは二人で国王の私室から出ると近衛騎士団の執務室へと向かった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

冷血皇帝陛下は廃妃をお望みです

cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたアナスタシア。 厳しい王妃教育が終了し17歳で王太子シリウスに嫁いだ。 嫁ぐ時シリウスは「僕は民と同様に妻も子も慈しむ家庭を築きたいんだ」と告げた。 嫁いで6年目。23歳になっても子が成せずシリウスは側妃を王宮に迎えた。 4カ月後側妃の妊娠が知らされるが、それは流産によって妊娠が判ったのだった。 側妃に毒を盛ったと何故かアナスタシアは無実の罪で裁かれてしまう。 シリウスに離縁され廃妃となった挙句、余罪があると塔に幽閉されてしまった。 静かに過ごすアナスタシアの癒しはたった1つだけある窓にやってくるカラスだった。 ※タグがこれ以上入らないですがざまぁのようなものがあるかも知れません。  (作者的にそれをザマぁとは思ってません。外道なので・・<(_ _)>) ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※作者都合のご都合主義です。作者は外道なので気を付けてください(何に?‥いろいろ) ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...