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色と証人
しおりを挟むウィルフレッドがレティシアの母親はソハナスの元王女であったレイリアである事を口にした。レオナルドは緊張の面持ちで、アルバートは驚いた表情である。
「冗談・・・ではないようだね」
「えぇ、本人からも聞いております」
「ちょっと待ってくれ!では、リアもか!?」
「そうです。ベルモンド姉妹はソハナスの元王女、レイリア王女とベルモンド辺境伯との間にできた子です」
「・・・そんな」
「アルバート殿下はこれを聞いて、マリーリア嬢に愛想がつきましたか?」
「そんなはずないだろう!今までもこれからも、僕が愛するのはリアだけだ・・・ただ・・・教えてもらえなかった事は悲しいな」
アルバートは節目がちに俯いた。
「殿下、マリーリア嬢は、この事を秘密にしていた訳ではありません」
「しかし聞いたことなんてないよ」
「言わなかったのではなく、知らなかったのです」
「知らなかった・・・?」
「はい、マリーリア嬢は父親であるベルモンド辺境伯の色、すなわち金を受け継いでおられます。ですがシアはレイリア王女の銀を受け継いだ。ソハナスに見つかっては困ると危惧していたと言います。だから、シアだけには辺境伯が母親の事を話していたそうです。私も聞かされたのはほんの数日前ですから」
「しかし、それを何故断言できる?その夫人はとうの昔に亡くなっていると聞く。本当にソハナスの王女だったのか?」
「それには深く関わった証人がおります」
「深く関わった・・・証人?」
「クレイドルだ」
二人の会話に国王クレイドルが割って入る。
「叔父上・・・ですか?」
「あぁ、ソハナスの王女、レイリア王女は、元は私の妃にと打診が来ておった」
「そのような事が」
国王レオナルドは、レイリア王女との縁談を断った事。それによりソハナスの国の内情が荒れた事。国王を討ち取った子爵家の子息が、現在の成り上がりの国王
である事。故に王族たるものの常識が備わっておらず、内政が荒れ、民は重税を強いられ、国王が気に入れば有無を言わさず娘を愛妾にと召し上げさせられる。今のソハナスをそうしてしまったのは、全て自身の恋情のわがままからきたものだと打ち明けた。どうしてもクリスティアを自身の妃にしたかった。一番でも二番でもなく、たった一人の愛する唯一の妃として。ただそれは軽い気持ちで断ったに過ぎないことだった。だからここまで影響を及ぼし、その上後世に渡ることまでとは思いもしない若さ故の過ちだった。
「縁談を断られた王女は、ソハナスでどんな扱いを受けるのか、恐怖を抱えたまま、命からがら逃げ出し、北の辺境の境までたどり着いた。そこでまだ辺境のイチ騎士だったクレイドルが、レイリア王女の体調が回復したのを機に、当時交友もあり、距離も少しある東の辺境ベルモンドへと王女を預けた」
国王は当時の事を静かに語っていた。
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