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レオおじ様
しおりを挟むウィルフレッドがこの十日間で回ってきた場所、会ってきた人物、あった出来事など、様々な話をする中、今日一番の反応を見せた国王。娘が欲しかったという本音を言った後の、娘のように可愛いと思っていた姪のエルサが狙われている。その事実にいてもたってもいられない気持ちだった。
「エルサは無事なのか!?」
「今のところソハナスからは危険が及ぶような動きは見られないとの事ですが、何が起こるかわからないと言うのが本音でしょう」
「何という事だ・・・そうだ!」
国王レオナルドは何かを思いついた顔をしている。
「どうしました、父上?」
「エルサを王都に呼べ。エルサは王宮で守る!」
「陛下、お待ちください。エルサ嬢はそれは望まないと思います」
「しかし、可愛い姪に何かあったらどうする!」
「父上、エルサ嬢は騎士達に混じって剣をたしなみます。普通の令嬢とは違いますよ」
「しかし!」
「陛下、エルサ嬢が王宮へ避難したいかどうかは本人の意思を確認されたがいいと思います。コルテオに通信機を使わせて確認をしましょう」
国王は渋々といった様子だったが、嫌がる姪を無理矢理連れてきて嫌われるのも憚られた。ウィルフレッドは急ぎコルテオの元へ急ぎ、通信機を用意させた。
「陛下、お待たせしました。北の辺境伯と通信が繋がっております」
「クレイドルか?」
「はい、ご無沙汰しております」
「先日の小競り合いの件はご苦労であった」
「いえ」
「エルサはいるか?」
「エルサですか?今、呼んで参ります」
クレイドルの声がしてから静寂の時間が過ぎる。しばらくすると何やら話し声が聞こえてきた。
「ここに向かって話せばいいの?あの、エルサです」
「おぉ!エルサか!久しいな、元気にしていたか?」
「その声は陛下にございますか?」
「そうだ、しかし・・・陛下とは寂しいの・・・昔みたいに、レオおじ様と呼んでくれないのか?」
「・・・流石に呼べませんわ。もう分別がきく大人ですのよ?」
「・・・たった一人の姪なのだぞ?そんなもの気にせず呼んでくれ」
「・・・今回だけですわよ?レオおじ様」
「おぉぉ!!やはり嬉しいものだな。それはそうと、エルサ、しばらくこちらに来ていないだろう?王都に遊びに来ないか?」
「遊びにですか?申し訳ありませんが、私には辺境を守るというお役目がありますので」
「そんな事、エルサが気にする事ではないだろう!騎士に任せておけばいい。その為に沢山の騎士を配置しておるのだぞ!」
「話はそれだけですか?それでは陛下、お身体にお気をつけて過ごされてくださいませ」
「エ、エルサ!?ま、待ちなさい!まだ話は終わっておらん!エルサ!エルサ!」
必死に呼びかける国王だったが、その後は通信機からエルサの声が聞こえることはなかった。
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