騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
351 / 544

西の辺境とイズヴァンド

しおりを挟む


「それはそうと、ウィルフレッド、十日の休暇は何をして過ごしておったのだ?」

「はい、まずは私の師匠でもある西の辺境伯、ゲオルグ・カルスヴァ殿のところへ行ってきました」

「随分遠出しておったのだな。一人でか?」

「まさか。あの時の私が妻から離れて一人で旅のような事をできたとお思いですか?」

「うむ、確かにな。では夫人も一緒に?」

「えぇ、シアの方から行こうと提案されたのです。師匠の怪我の具合もですが、嫁がれたイザベラ嬢、今は夫人ですね。気にしていたようでしたから」

「ほう・・・それで、ゲオルグの怪我の様子は?」

「まだ傷は癒えてはおりませんが、順調に回復に向かっているようです」

「そうか、それはよかった。イザベラ嬢の様子はどのような風であった?」

「はい、私も実際に目にするまでは、親子ほど歳の離れた夫婦が想い合う事はないと思っておりました。ですが、師匠の気持ちが通じたのでしょう。夫人も師匠に対して恋愛感情を持っているようでしたから」

「そうなのか。彼女の意見など聞きもせず辺境へと送ってしまったからな。少々気にはなっていたが、案外うまくいくものなのだな」

「まぁ、お互い愛に飢えていたとでも言いましょうか。師匠は15年も彼女一人を想い続け、イザベラ夫人は愛を拗らせ愛される事を知らないままでした。互いが必要な存在と認識した今、惹かれ合うのは自然の摂理だったかもしれません。今は師匠も遠慮する事なくイザベラ夫人にべったりですし、イザベラ夫人もそれを嫌がる様子もなく、なんなら照れたり赤くなったり忙しそうな様子でしたね」


国王レオナルドは興味深く話を聞いていた。


「その後は北の辺境領へ行く途中、イズヴァンドへ立ち寄りました」

「イズヴァンドか・・・」

「えぇ、レイバンの処遇も決めなければなりません。その為にも現状を見ておくべきだと思ったのです」


国王はウィルフレッドの顔を見ると真剣な表情で次を促す。


「イズヴァンドでは何か収穫はあったか?」

「レイバンが幼い頃、孤児院で世話になった神父様がおられました。そして・・・実の祖父である事がわかりました」

「身内が生きていたのか!」

「そうです。レイバンがどのように思うかは未知数ですが、神父様はレイバンにもう一度会えるなら、今度こそ家族としての時間を取りたいとおっしゃっておられました。それと・・・」


ウィルフレッドは一度言い淀んだが、レイバンが再度生きる糧になるのならと話をする事にした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

遠くの光に踵を上げて

瑞原唯子
ファンタジー
敗北を知らない18歳の少年と、一族から蔑まれてきた10歳の少女の、出会いから始まる物語。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...